ソチ五輪を終えて ~ライバル パトリック・チャン その1~

ゆづ祝勝祭りに戻ります。今日は、結弦くんの最大のライバル、パトリック・チャンについて語ります。
ソチでの結弦くんの金メダルを語るに、チャンの存在はどうしても無視できないからです。

フィギュアスケートファンなら、誰も知らない人のいない、ワールド三連覇中の男子シングル絶対王者。
ソチ五輪の金メダル筆頭候補は、チャンでした。彼自身も、そう自負している発言をしていました。
スロースターターのチャンも、さすがに五輪シーズンは、早めの仕上がりを見せていました。
ショートのプログラムは持越しでしたから、フリーの滑り込みに時間をかけれたこともあるでしょう。

この二人は、GPシリーズ3戦、オリンピック2戦(団体含)を戦いました。振り返ると、まるでスポ根マンガのようでした。そう、心からワクワクさせられる、脚本のないドラマでしたね。絶対王者に挑戦する若き挑戦者は、最初は二度にわたって完敗します。けれど、王者との戦いで大きく成長した青年は、遂に無敗の王者を捕らえます。
さらには、青年が憧れていた”皇帝”との対決まで用意され、皇帝との直接対決にも勝利。皇帝は、戦いの場から去り際、自分を倒した青年を、自分の後継者として祝福します。そして、王者との最後の対決は・・・!?

ラストは、負けたかと見せて、ドンデン返しのオマケつき(笑) いや、これはすげードラマでしたよ。
結弦くん、ミッツの言うとうり、あなたは本当に女優だわ(笑) 存在そのものがドラマになる。
綺麗な顔とスタイルの外見だけが二次元じゃないのよね。あなたは、生き様まで二次元そのものです(笑)

では、二人が対戦したグランプリシリーズ3試合の戦績をまとめておきます。『競技会名 → 優勝者』です。

GPシリーズ・カナダ杯 → Pチャン
1 Patrick CHAN(カナダ)262.03 (SP:88.1 FS:173.93)
2 Yuzuru HANYU(日本)234.80 (SP:80.4 FS:154.4)
 

GPシリーズ・フランス杯 → Pチャン
1 Patrick CHAN(カナダ)295.27 (SP:98.52 FS:196.75)  ショート・フリーともPB更新
2 Yuzuru HANYU(日本)263.59 (SP:95.37 FS:168.22)
  

GPファイナル → 結弦くん
1 Yuzuru HANYU(日本)293.25 (SP:99.84 FS:193.41)  ショート・フリーともPB更新
2 Patrick CHAN(カナダ)280.08 (SP:87.47 FS:192.61)


チャンは、フランス杯、ショート・フリーとも、ほぼノーミスの完璧な演技でした。元々、チャンはあまりノーミスするイメージがないので、「滅多にお目にかかれないものを見せてもらった」というのが正直な感想でした。実際、フランス杯の、特にフリーは文句のつけようがないくらい素晴らしかった。おそらく、誰もが「オリンピックチャンピオンはチャンで決まり」だと思ったことでしょう。このとき、結弦くんとチャンの点差は、30点以上もあったのです。
フランス杯終了後のインタビューでも、結弦くんは、こう答えています。

(今回のチャンのように)SP、フリーともノーミスというのは、スケーターにとって稀(まれ)なこと。その舞台に一緒にいられたというのは光栄なこと。彼は雲の上の存在ですけど、その演技を見たことで、『自分はもっと頑張らなきゃ』と思える部分がありました。

この高難度構成時代、トップスケーターでも、SPとFS両方完璧な神演技でそろえるなんて、そうそうできるものではありません。正直、「GPシリーズなんかで、貴重な神演技チケット、使っちゃっていいの?」と思ったものでした。実際、その懸念は当たってしまって、振り返れば、フランス杯がチャンのピークになってしまったのです。 

結弦くんが、ついにチャンを捕らえたのがGPファイナル。ショートはさらに磨きをかけて、世界記録を更新。
そして、フリーは、1転倒しても、TES100点を越えたのです。チャンはフランス杯ほどの出来ではなかったけれど、大きなミスなくまとめました。にも関わらず、フリーも結弦くんが1位。サルコウを転倒しても、他のミスがなければ、完璧なチャンのTESとほとんど変わらないことが証明され、連動するように、PCSも90点を超えて、ここでチャンのPCSの優位もほとんどなくなりました。つまり、『ノーミス同士だったら、羽生が勝つ』とジャッジからアナウンスされたに等しい。オリンピックを前に、『チャン絶対優位』の風向きを変えた大きな一勝でした。

パトリック・チャンの戦績は素晴らしいものです。特にここ3年は無敵状態でしたね。
カナダ選手権 : 金7(7連覇中) / 世界選手権 : 金3(三連覇中) 銀2、
四大陸選手権 : 金2 / GPファイナル : 金2 銀1 銅1


唯一ない金メダルが、オリンピックの金メダルでした。前回のバンクーバーは5位に終わっています。

チャンは、2009-2010年シーズン終了後、ジャンプ指導に定評のあるクリスティ・クラールをコーチに迎え、四回転トゥーループを習得。元々スケーティング巧者だったチャンに四回転という武器が加わったのです。
ショート1回、フリーで2回四回転を入れる構成は、他の選手を圧倒、高いPCSも相まって、「3回こけてもチャンが勝つ」と皮肉られるほど、チャンには誰も勝てない時代が始まりました。そして、ワールド三連覇。

大きな転機が訪れたのは2012年4月。指導法についての考え方の違いからクラールがコーチを辞任。サブコーチであったモダンバレエコーチのキャシー・ジョンソンをメインコーチに迎えます。
チャンは、四回転サルコウの練習もしていましたが、プログラムに入れれる段階に至りませんでした。トリプルアクセルも上達したとはいえ、フリーは前半に1本のみ。すでに、ジャンプ構成を上げることには限界を感じてたのか、表現力やプログラムの完成度をあげることで、得点の上積みを考えていたようです。もし、クラールがジャンプ構成をあげる必要を感じていたとすれば・・・それが『指導法についての考えた方の違い』だったのかしら。

以上は、想像半分ですが、実際、チャンのジャンプ構成はこの3年間ほとんど変わっていないのです。
それでも勝ててきたわけですが、他の選手は、チャンに追いつけ追い越せで、どんどん構成をあげてきます。
PCSで勝てない選手は、TESを稼ぐしかないからです。結弦くんも、そんな選手の一人でした。

「たられば」ですが、もし、チャンがメインコーチを変えてなかったら、違う結果になっていたかも・・・と思ったりします。ジョンソンのおかげで、チャンの表現力は確かにあがりました。しかし、ジャンプの伸び代を引き換えにしたような気がしてなりません。何よりも、ジョンソンはフィギュアスケートには素人です。一方のオーサーは、プロ中のプロ。戦略面でジョンソンが勝てる相手ではありません。クラールなら、追い上げてくる若手の脅威をもっと早く察知していたかもしれない・・・そんなことも少し考えてしまいました。

なんだかんだと語っている間に、長くなってしまいました。ということで、チャン語りは、次回も続きます(汗)


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テーマ : フィギュアスケート - ジャンル : スポーツ

2014/03/15 18:10 | 2013-2014 seasonCOMMENT(3)TRACKBACK(0)  TOP

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