ソチ五輪を終えて ~ライバル パトリック・チャン その2~
チャン語り、その2です。まず、結弦くんとチャンの、ソチ五輪での戦績をあげておきます。
ソチオリンピック 団体戦(SP) → 結弦くん
1 JPN Yuzuru HANYU 97.98
2 RUS Evgeny PLYUSHCHENKO 91.39
3 CAN Patrick CHAN 89.71
ソチオリンピック 個人戦 → 結弦くん
1 HANYU Yuzuru(日本) 280.09 (SP:101.45/FS:178.64) SP世界記録更新
2 CHAN Patrick(カナダ) 275.62 (SP:97.52/FS:178.10)
グランプリファイナルで優勝したとはいえ、オリンピック前の下馬評はチャンの方が優勢でした。
その空気を一気に変えたのが、団体戦のショートでした。結弦くんは、地元のプルシェンコをも上回り、堂々の一位。チャンは精彩を欠き、3位。個人戦を前に、団体戦でジャッジに好印象を与えたのは大きかったでしょう。
こうみてみると、GPシリーズの2戦は、ショート・フリーとも、チャンの圧勝でした。しかし・・・。
GPF、五輪団体戦、五輪個人戦と、残りの3戦は、ショート・フリーとも、結弦くんの完勝です。
そう考えると、GPFから、”絶対王者”の地位はすでに交替していた・・・といえるかもしれません。
さて、カナダの呪い といわれるものがあります。” カナダの男子シングルのワールドチャンピオンは、オリンピックで決して金メダルをとれない ”・・・というジンクスです。それゆえ、長い間、男子シングルの金メダルは、カナダの悲願でした。チャンにかけられる、悲願達成へのカナダの期待は相当なものだったと思われます。
そんな彼に、これでもか!と、さらに呪いをかけなおすかのような番組がありました。CBC放送です。
途中まで翻訳されています。三分の一くらいですが、それでも、番組の趣旨はわかるかと思います。
出演してるのは5人。チャンと、『カナダの呪い』の前にくだけ散った、以下の4人の先輩たちです。
カート・ブラウニング → カナダ選手権:金4 / 世界選手権:金4
ブライアン・オーサー → カナダ選手権:金8 / 世界選手権:金1 / オリンピック:銀2
エルビス・ストイコ → カナダ選手権:金7 / 世界選手権:金3 / オリンピック:銀2
ジェフリー・バトル → カナダ選手権:金3 / 世界選手権:金1 / オリンピック:銅1
四人の先輩たちが、「いかにオリンピックで力を発揮できず、金メダルを逃したか」という経験談を、入れ替わり立ち替わり、チャンに過去の映像つきで語っています。ライバルの結弦くんの映像もでてきます。もはや、CBCはチャンにプレッシャーの追い打ちかけて面白がってるとしか思えない。チャンの笑顔が引きつってるように見えるのは気のせいかしら(笑) これは巷では『呪いのビデオ』と呼ばれ、チャンはさすがに同情されてますね。
先人の失敗から学べ・・・という親切心からの企画だったのかもしれません。しかし、イメージトレーニングというのは大切なもの。結弦くんは、カナダからソチへ移動する飛行機の中で、ずっと四回転を成功させるイメトレを脳内でしていたそうです。この番組は、チャンにとっては、”負ける”イメトレ効果しかなかったような気がしてなりません。過去、オリンピック金メダルを逃した男子シングルのカナダ人世界チャンピオンは6人いたそうですが、チャンが7人目になってしまいました。この番組のせい・・・というわけではないでしょうが。
もうひとつ動画をあげておきます。ソチ五輪の、チャンの個人戦フリーの演技です。日本語字幕つき。
解説はカート・ブラウニング。カートは、いつもはもっと明るい男ですが、声のトーンが何気に暗いです(笑)
まあ、カナダの悲願の金メダルがかかった大勝負ですから・・・カートも緊張してたのかもしれません。
結弦くんはジャンプは3ミスでしたが、チャンはジャンプを4ミスしてしまいました。チャンのフリーの演技が終わった後、カートはこう言いました。「あと少しで結果がでますが・・・彼(チャン)は、知りたいだろうか? 私にはわかりません」と。カートにはわかってたんでしょうね。チャンが、いやカナダがまたしても金を逃してしまったことが。
オーサーは、二度目のオリンピックでも銀メダルに終わった後、そのショックから立ち直るのに10年を要したそうです。今のチャンの一番の理解者は、皮肉にもチャンの金を阻止する形になったオーサーかもしれません。
チャンは、フリーの演技の最中、金メダルが手の中からすり抜けていく感覚を味わったそうです。確かに、結弦くんが投げてよこした金メダルをチャンが取り落とし、その取り落とした金メダルがコロコロと転がって、結弦くんの元に戻ってしまったかのような展開でした。チャンはこう言っています。
「あの思いは、簡単には忘れられないだろう。がっかりしたが、それでも人生は続くんだ」と。
チャンは、3月の世界選手権を欠場を表明しました。オリンピックメダリストが直後のワールドを辞退するのは珍しいことではありません。銅メダルのテン選手も欠場します。でも、チャンにとっては、今回は四連覇がかかっていました。現役続行するかどうかも曖昧な発言をしています。まだ気持ちの整理がつかないのかもしれません。
オリンピックチャンピオンになっても、結弦くんは、チャンを完全に超えたとは、まだ思っていないでしょう。
チャンは23歳。二十代後半まで現役を続ける選手が増えている中、まだまだ続けることは可能な年齢です。
今シーズンは多くの選手が引退します。その引退の形にも、色々な人生模様があります。ピークのときにスパッと辞めるのか、限界までやりきって辞めるのか・・・セカンドキャリアのことも考えると、とても難しい決断ですね。
結弦くんとチャンの対決は、できればまだ見たいけれど、現役を引退した後の人生の方が長いのも確か。
ゆっくり考えて、悔いのない結論をだしてほしいです。ワールドは欠場するけれど、日本のアイスショーには参加予定のチャン。とりあえず、4月のアイスショーで、生のチャンに会えるのを楽しみにしています♪
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2014/03/17 08:30 | 2013-2014 season | COMMENT(7) | TRACKBACK(0) TOP