フィギュア選手と同性愛 ~男子フィギュアの価値観とセクシャリティの狭間~ その2

Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2014年 2/18号 [新興国リスク 試される世界経済]Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2014年 2/18号 [新興国リスク 試される世界経済]
(2014/02/12)
不明

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前回より引き続き、「フィギュア選手と同性愛 ~男子フィギュアの価値観とセクシャリティの狭間~」というテーマをとりあげます。2回目は、「Newsweek 2014年2/18号」に載っていた「フィギュア選手と同性愛」という記事に焦点をあてます。「男子フィギュアのあるべき姿」にこだわる保守的な協会のスタンスと、選手のセクシャリティの狭間で、どのようにして、その両者のバランスがとられてきたのでしょうか。
なお、1回目でもお断りしましたが、こういった話題が不快な方は、読まずにスルーをお願いいたします。

「フィギュア選手と同性愛」というタイトルには、「『男らしく』という価値観に縛られカミングアウトできない苦悩」というサブタイトルがついていました。特に北米では、「男子のフィギュアスケート選手はゲイ」という偏見が根強くあります。そして、審査員もスポンサー企業もテレビの視聴者も、女子選手には「きれいな女の子」を、男子選手には「男らしい男」を期待している。選手も協会もそれをよくわかっているのです。そんな中で、男子フィギュアスケーターが、カミングアウトすることはとても勇気がいることです。現役時代には特に難しい。

では、実際、フィギュア界の男子選手には、どれくらいの割合で、同性愛者がいるのでしょうか?

・ 過去20年間に五輪メダルをとった男子選手14人のうち、少なくとも7人はゲイだと内輪では知られていた。
・ 内部関係者の非公式の推定では、(男子選手の)25~50%近くがゲイとされている。


これらは、どちらも、2006年に、2人のフィギュアの専門家の記事で書かれていた証言です。
でも、北米のスケ―ト協会は、「フィギュアスケートはゲイのスポーツ」というイメージを払拭したがっていました。協会が男子選手に求めるのはただひとつ・・・ゲイでもいい、だが男らしい演技をしろ!ということでした。

そして、そんなフィギュア界の空気に真向から逆らう姿勢で相対していたのが、ジョニー・ウィアーでした。
現役時代はカムアウトこそしなかったけれど、ルックスとスケートスタイルでフェミニンな路線を貫きました。
その結果、彼はアメリカのスケート協会の幹部たちに睨まれ、五輪でも三番手扱いとなり点数が伸びず・・・。
さらには、ネットの人気投票で一位だったにも関わらず、五輪後のアイスショーのメンバーから外されます。
「男子選手は男らしく」という保守的な価値観を打ち破ろうと、ジョニーは挑み、跳ね返されたのです。

しかし、ここでそんな古い価値観に敢然と挑戦してきた少年がいました。羽生結弦です。
もちろん、彼の内面はこれ以上ないくらい”漢”ですが、「憧れの選手はジョニー・ウィアー」の公言も憚らない。
リプニツカヤのコーチ、エテリ・トゥトベリゼをして「まるで美少女のよう」と言わしめた中性的な容姿と演技スタイルは、フィギュア界の「男らしさ」を重視する価値観から見れば、理想的とはいえないものだったと思います。
けれども、フリーなら100点を超える驚異的な技術点(TES)で、彼はそれらの古い価値観をねじ伏せてしまいました。「THE HANYU」という新たな男子フィギュアスケーターのモデルを作り、認めさせてしまったのです。
古い世界に新しい風を吹き込むには、圧倒的な力が必要。結弦くんにはあり、ジョニーにはなかったものです。

こちらの記事で紹介したファイナルのエキシビション実況で、女性解説者が、結弦くんの技術や音楽表現を絶賛する一方で、こんなことを言っていました。「でも、一部の人は男らしい力強いスタイルが好きなの。フェルナンデスみたいな。一部の人は、男子のフィギュアを見るときには、そのようなタイプを求めるわ」と。
安藤美姫さんも、某テレビ番組で、「羽生選手には男性的な色気が足りない」と発言してたことがあります。

つまり・・・結弦くんが、世界中の専門家が揃って「次元が違う」「宇宙人」と誉めちぎり、フィギュア界の「男子選手は男らしく」という要求を封じ込めるような存在になっても、旧態依然のものさしで計る人はやはりいるわけで・・・とはいえ、ジェイソン・ブラウンのような決して男らしいとはいえないタイプのスケーターが、グレイシー・ゴールドよりアメリカで人気がある・・・という世の流れをみると、これから、フィギュア界の常識も少しずつ変わっていくのではないでしょうか。ジョニーも今は協会と和解し、NBCの解説者にもなっています。 

元々、「パリの散歩道」は、オーサーが「結弦をもっと男性的に」と希望して与えたプログラムでした。ストイコも、五輪シーズンの頃、「結弦にはもっと男らしい演技をしてほしい」と発言していました。けれど、結弦くんは、自分の個性というものをよくわかっています。「オペラ座の怪人」も、本当はファントムとクリスティーヌ二役をやりたかったそうだし(笑)、これからも、結弦くんにしかできない世界感を追及していってほしいです。「アスリートであり、アーティストでありたい、でも、どちらか・・・と言われたら、僕はアーティストになりたい」と言っていた結弦くん。そして、今はオーサーも、そんな結弦くんの最大の理解者になってくれてると思います。

なんだかんだいいつつ、結局、最後は結弦くん語りで締めてしまいました・・・。 
彼には、史上最高のスケーターとして、そしてフィギュア界の革命児として、その名を残してほしい。
けれど、まずは目先の世界選手権。よい調整ができていますように。今はただそれだけを願っています。


     ランビとジョニー

アイスショーの合間に寛ぐジョニーとランビ。この二人だとこういう妖しいショットもめちゃサマになるなあ(笑)


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テーマ : フィギュアスケート - ジャンル : スポーツ

2015/03/18 10:30 | 2014-2015 seasonCOMMENT(13)TRACKBACK(0)  TOP

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