羽生結弦「今季、難度上げ苦しかった」 ~読売新聞世選後インタ~
少し古いですが、世界選手権後の、読売新聞の紙面記事です。
読みごたえのあるインタビューだったので、紹介します。国別対抗戦前です。
羽生 平昌へ手応え(2017.4.18 読売新聞)
世界王座3年ぶり奪還
フィギュアスケート男子で、3年ぶりに世界王者に返り咲いた羽生結弦(22)(ANA)が、読売新聞のインタビューに応じた。4回転ループを組み込み、難度を上げたプログラムに挑んだ今季を「苦しかった」と振り返り、平昌五輪を迎える来季へ「いい道が見えてきた」と手応えを語った。(聞き手・前田剛)
今季 難度上げ「苦しかった」
― 世界選手権はフリーで223.20点の世界歴代最高をマークし、ショートプログラム(SP)5位から逆転優勝を飾った。
羽生:単純にうれしい気持ちもあるけれど、達成感が一番強い。今シーズン、フリーは特に後半のコンビネーション(ジャンプ)が決まらず、練習したことがかみ合わなかった。その苦しさ、歯がゆさを、やっと晴らせたという感覚だった。
― 今季のフリー「ホープ&レガシー」は自ら選曲した。悩みも深かった。
羽生:シーズン前半、全くノーミス(ミスなく滑ること)が出来なかったので、苦しかった。振り返ってみれば、この構成を決めた時に簡単にノーミスできないと覚悟したはずだった。でも、一つひとつの試合としては、悔しかった思いが非常に強い1年だった。
― 今季に五輪があるわけではないが、「五輪の金メダルを考えてやってきた」と言っていた。
羽生:五輪の金メダルのために、ここまで苦しみ、もがきながらでも成長したいと思った。今シーズンは、(4回転)ループを絶対入れないといけないシーズンではなかった。(昨季と同じ構成なら)間違いなく、安定した結果はついてきた。ただ、そうしなかったのは、来シーズンになって『ループをやっておけば』と思いたくなかったから。新しいジャンプを試合で経験できたことは、来シーズンに生きてくる。
―昨季のグランプリ(GP)ファイナルで打ち立てた合計の世界歴代最高得点(330.43)を「大きな壁」と例えていた。壁の向こうは見えてきたか。
羽生:いや、まだ、ちょっと手が届きそうな位置にきたぐらい。10代の頃だったら、壁にぶち当たっても壊すぐらいの勢いで上っていったと思う。今は、ロッククライミングみたいに、登り切るために一つひとつ手探りで、道筋を立ててやっている状態。今シーズンは苦しかったが、やっと、いい道が見えてきた。
ノーミス目指したい
― 20日にシーズン最終戦となる世界国別対抗戦(代々木体育館)が開幕する。
羽生:試合があるから、うまくなろうと思える。また成長したい。
― 米国のロック歌手、プリンスの「レッツ・ゴー・クレイジー」を用いたSPは今季、まだ完璧な演技がない。
羽生:しっかり、狙っていきたい。とにかく、演技としての完成というのを目指してやれればと思う。
― 世界選手権のフリーのような演技を続けることが大事になる。
羽生:昨シーズンに、NHK杯とGPファイナルで(ミスのない演技を)2試合続けることが出来たが、ファイナルで感じたプレッシャーは今でも自分の中に残っている。そして、その後にノーミスの演技を続けられなかったことも経験した。それを生かし、乗り越えるために何ができるかを考えなければならない。
― それが平昌五輪につながる。
羽生:五輪シーズンは、五輪まで安定して結果を出さないと(メダル)争いに入れない。だから、来シーズンは、クリーンな(ミスのない)プログラムを続けたい。
<羽生選手の今季成績>
オータムクラシック 1位 260.57(SP:88.30+FS:172.27)
スケートカナダ 2位 263.06(SP:79.65+FS:183.41)
NHK杯 1位 301.47(SP:103.89+FS:197.58)
GPファイナル 1位 293.90(SP:106.53+FS:187.37)
四大陸選手権 2位 303.71(SP:97.04+FS:206.67)
世界選手権 1位 321.59(SP:98.39+FS:223.20)
振り返ってみれば、2ヶ月も氷上練習ができない、シーズン全休さえも考えたという重篤な怪我をして、シニアに上がって初めてオフのアイスショーは全休という非常事態でした。どうなることかと心配しましたが、シーズン始まってみれば、四回転ループを史上初めて成功。6試合で、優勝4回、2位2回・・・ファイナル四連覇も達成したし、世界タイトルも奪還、フリーは世界最高得点更新・・・と、大変いい結果を残した、充実した1年だったのではないかと思います。
このインタは、五輪二連覇達成のための「羽生結弦の戦略」を率直に語ったものだと感じました。
オーサーもトレイシーも、ループを入れることには反対していた。シェイリーンも、一気に構成を上げすぎると難色をしめした。新しい四回転を入れるリスクを冒さなくても、羽生結弦は「完成度を重視」すれば勝てるからです。無理に構成を上げて、崩れた演技を繰り返せば、昨シーズン、せっかく上げた評価を落としてしまう。でも、それは、結弦くん自身も十分承知していた。リスクを冒してまで、周囲の反対を押し切ってまで、ループ導入にこだわった理由をこう語っています。
今シーズンは、(4回転)ループを絶対入れないといけないシーズンではなかった。(昨季と同じ構成なら)間違いなく、安定した結果はついてきた。ただ、そうしなかったのは、来シーズンになって『ループをやっておけば』と思いたくなかったから。
結弦くんにとっては、プレシーズンに新しい四回転を入れることは、五輪シーズンに「四回転の数を増やしておけば」という後悔をしないための、リスクヘッジだった。
彼の見ているのは、目先の勝利ではない。あくまでも五輪での勝利なのです。
パトリック・チャンは、ワールド三連覇中、ジャンプ構成をほとんど変えなかった。それでも勝てたからです。基礎点をあげずに、演技の完成度で勝負しようとし、結果的に、構成を上げて技術点勝負にでた結弦くんの後塵を拝したチャン。その彼を、一番身近で見ていたのは、結弦くん自身です。
ループの導入は、五輪連覇のために万全の体制をとっておく「羽生結弦の戦略」だったのでしょう。
サンデーモーニングで、「来シーズン、ルッツを入れる気はない」と語っていた結弦くん。
この読売新聞のインタビューでも、「五輪シーズンは安定した演技を続けたい」と言っているので、来シーズンは、オーサーの戦略通り、完成度重視でいく可能性が高いのではないでしょうか。
「SEIMEI」は、今ならいつでもノーミスできる自信がある・・・と語っていた結弦くん。より難度の高いプログラムをすることで、それまでのワンランク構成を下げたプログラムは難なくこなせるようになるということでしょう。まだループを実践に入れてなかった頃、「より難しいループを練習することで、サルコウの確率が上がる」と言っていたのと、通じるものがあるかもしれません。
一番可能性があるのは、新しい四回転は増やさずに、今の3種クワドのままで、多少組み合わせを変えて基礎点をあげるという戦法かな・・・と勝手に想像していますが(笑)、いつも想像の斜め上をいく人なので、もしオフの間に試したクワドルッツがバンバン決まるようになったら、さてどうなるか(笑) ただ、彼は、チャレンジャーではあるけれど、無謀ではありません。大胆だけど冷静な人。五輪で確実に勝利を得ることだけに焦点を絞って、戦略を練ってくるのでは・・・と思います。
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2017/05/10 10:20 | その他(2016-2017) | COMMENT(0) | TRACKBACK(0) TOP