羽生結弦を撮るフォトグラファーたち <田中宣明> その2

田中さんが出演していた日テレプラスの「写真で描くフィギュアスケート ~スポーツカメラマン田中宣明の世界」の中で、印象に残った部分について、簡単に書いておきます。


● 田中さんのフィギュアスケートの取材の原点
2001年東京で開催されたグランプリファイナル、仕事で初めて生でフィギュアスケートを見た。アレクセイ・ヤグディンを見て、「カッコいいな」と思い、それから男子フィギュアスケートに興味をもった。

● フィギュアスケートを撮る上での信条
スケーターは、ジャンプやスピンの写真を嫌う。ジャンプやスピンのときは遠心力が働くので、綺麗に顔が収まる人が少ない。4Lzや4Sなどクワドを跳ぶ写真は必ずシャッターを押す。記録として、フィギュアの歴史に残るので。ただ、表にはださない。荒川静香や本田真凛はジャンプのときでも顔が歪まないスケーター。彼女らの場合は写真を表に出せると思うが、それでも(本人が嫌がるので)出さない。

スケーターやスケーターの親御さんが喜ぶ写真を撮ってあげたい。だから、ジャンプやスピンの写真は使わないのが信条。また、アイスショーなどのプログラムの写真の場合は、手や足が切れているとスケーターが嫌がるので、そういう写真も使わない。難しいことなのだが、それが難しいスケーターほど燃える。カロリーナ・コストナーなどは、手足が長く、(手足の切れない写真を撮るのは)難しい。

● 田中さんからみた輝き続けるプロスケーター
プロスケーターでは、ダントツでステファン・ランビエール。身体のどのラインをとっても美しい。現役のときはそれほど思わなかったが、プロになってからのステファンは、どれだけ写真を撮っても飽きない。

● 理想のカメラマン像
僕らがどんなに頑張っても、親御さんが撮る写真の表情にはかなわない。少しでもそれに近づきたいと思っている。どこの会場にでも現れる親せきのおじさんみたいな存在になりたい。スケーターに自分のひととなりをわかってもらえると、スケーターの表情のバリエーションが増える。



以下は、結弦くんについての部分。昨日の記事に被る部分もありますが。

羽生結弦を撮るようになってから、自分の(写真の)撮り方が変わった。
スケーターによっては、スピンのときは一切シャッターを押さないとか、ジャンプのときはシャッターを押さないとかあるが、羽生結弦に関していうと、常にファインダーで彼を見て、常にシャッターを押したくなるスケーターです。

練習を含め、常に一生懸命にやる。身体全部を使って表現しているスケーターなので、「こんな表情もあった」「こんな表情もあった」というのを常に拾っていくんです、自分の中で。「見たことないな」「これ、見たことないから、ファンの人に見せてあげたいな」とか、そうすごく思わせてくれるスケーターです。

彼のいい写真を撮るのはすごい難しいんです。本当に隙がないので。ジャンプのいく前にカウンターとか、スピンにいくときも違うスピンの形をとったり。本当に気の抜けないスケーターだから、本当に常にファインダーをずっとみています。



● 田中宣明の「とっておきの羽生結弦」

<2016年NHK杯フリー>


田中とっておきの羽生1

田中とっておきの羽生2

ひとつのプログラムの中で「このシーンは嵌るな」というか「このシーンはカッコいいな」というのはそんなにいっぱいないんです。その中の貴重なワンシーンというか、この角度だったらこれしかない!というようなシーンなんです。これは目線もいいんですよ。この手が目にかかっちゃったら使えないし、目線にピントを合わせるのも大変で。目線にピントがあって、全身とれてないと使えないので、PCに落して確認したとき、(使える写真だったので)ホッとしました。


<2015年GPFエキシビション>

田中とっておきの羽生3

エキシビションの最後の、ゴールドメダリストばかり集めた「フォトセッションをしますよ~」ってときに、周囲がうるさくて、「ゆづー」って1度呼んでもダメで、3,4回呼んで気づいてくれて、こちらをハッと見てくれたんです。そのときの顔がすごく普通の作ってない顔というか、自然な表情がとれていて、「これが自分が撮りたかったものだなあ」と、そのとき思いました。

どちらの写真も、雑誌やネットで探しても見つからなかったので、テレビの画面撮りです。不鮮明なのはそのためです(汗)


田中さんの「スピンやジャンプの写真は表にださない」というポリシーは、能登さんももっておられます。フィギュアスケーターとコミュニケーションを密にとっているフォトグラファーほどそうなるのは当然だと思います。

私も、購入するスケート誌を選ぶとき、そういう点もチェックしています。誌面作りに時代遅れ感は否めないけど、個人的に「ワールドフィギュアスケート」で一番評価している点は、絶対ジャンプの写真を載せない、写真のチョイスにスケーターへのリスペクトを感じることでしょうか。そこは、さすがに老舗雑誌だと思います。反対に、「応援ブック」が今ひとつ好きになれないところは、ジャンプの写真を多用する無神経さですね。「通信」は、そういう点も「応援ブック」よりはるかに配慮されていたのですが・・・。

また、田中さんのステファンへの惚れ込みっぷりもすごいですね。田中さんにとって、ファンタジーオンアイスの撮影はさぞ楽しいことでしょう。

フィギュアスケート Days Plus 2011-2012 男子シングル読本」に、ジョニーとステファンの対談が掲載されていました。その中で、ステファンがこんなことを言っています。

ものすごくうらやましいのは、ジョニーが素晴らしいボディラインの持ち主だということ。ジョニーにとってそれはとても自然なことなんだ。僕はボディラインのために何年もがんばっているのに、ジョニーの足元にもおよばない。僕はこれからもたくさんがんばらないといけないんだ。

おそらく、プロになってからのステファンのたゆまぬ努力が、田中さんをして「身体のどのラインをとっても美しい」と言わしめているのでしょう。日本のスケート界は、身体の線の美しさについて鈍感ですが、芸術分野では、身体の線を保つ、磨くのは、基本中の基本です。結弦くんのボディラインの美しさの評価が、海外で高いのはそういうことだと思います。


「羽生結弦を撮るフォトグラファーたち」の田中宣明編、もしかしたら、もう1回くらい続くかもしれません(汗)


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テーマ : フィギュアスケート - ジャンル : スポーツ

2018/07/15 17:10 | アーチスト・裏方・メディアCOMMENT(2)TRACKBACK(0)  TOP

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