新プロ「秋によせて」を示唆する羽生語録を探してみる ~古いスケート誌より

結弦くんの新しいショートプログラム、過去にジョニーが演じていた「秋によせて」と発表されました。ジョニーはアメリカの選手でありながら、ロシアテイストの強いスケーターであることはよく知られています。ジョニーの「秋によせて」は、タチアナ・タラソワさんの振付なんですね。10数年を経ての結弦くんによる再演は、「ノッテステラータ」と同様、タラソワ先生にとっても、素敵なプレゼントになるのではないでしょうか。

「ニジンスキーに捧ぐ」は、CWWや今年のFaOIで、プルさんが散々演じていましたので、そこにヒントがあったか・・・と納得するのですが、では、「秋によせて」を選ぶヒントって、どこかにあったか?・・・ということで、過去の今年の新プロを示唆する羽生語録をいくつか。添付してる写真は、私のもってるスケート誌資料から撮りました。


「フィギュアスケート 日本男子ファンブック Cutting Edge 2009」
発行:スキージャーナル 
発行年月:2008年11月



CE2099


憧れているふたりのスケーターーーージョニー・ウィアー選手とプルシェンコ選手なんですけどーーそのふたりを足して2で割ったような選手になりたいです。プルシェンコ選手の、ミスをしないところ、ジャンプが確実なところ。お客さんに見せる部分はすごく見せる、そういうところ。そしてジョニー・ウィアー選手の流れるスケーティングと、やわらかい表現。いつかは、そのすべてを持ち合わせた選手になりたいです!

ジョニーとプルシェンコを足して2で割ったようなスケーターになりたい・・・という羽生少年(取材時13~14歳頃)の言葉は、まるで今季のショートとフリーのプログラムを示唆していたかのようです。結弦くんは、プルさんの絶対王者としての強さやオーラに憧れていた。そして、ジョニーは、結弦くんのスケーターとしての美意識に大きく影響を与えたのです。

フィギュアスケートのようなスポーツで、強くなるために必要なもの。そのひとつは、「憧れの気持ち」なのだと、羽生結弦と話をしていて思った。憧れの、あの人のように。憧れの、あの舞台で。遠い遠い夢も、「憧れの気持ち」が強ければ、きっとひとつひとつ叶っていく。(P96より)

今となっては、このライターさんの結びの言葉が、「予言者ですか?」ってほど当たってる(笑)


「蒼い炎」
発行:扶養社
発行年月:2012年4月


この曲、好きだな、と思うものは多いんですよ。たとえば、ジョニーが滑った「秋によせて」(04-05年フリープログラム)。(中略) 他にも好きな曲はたくさんあって、 自分もプログラムに使ってみたいな、と思うこともあります。(P130より抜粋)

「蒼い炎」にも、好きな曲の中で、一番にあげてるのが「秋によせて」でした。「自分もプログラムに使ってみたいな、と思うこともあります」と、ここでも今季のショートプログラムにつながる言葉がありました。


「フィギュアスケート 日本男子ファンブック Cutting Edge 2011」
発行:スキージャーナル
発行年月:2011年3月発行



CE2011


Q6:今、いちばん注目しているフィギュアスケート選手は?
エフゲニー・プルシェンコ選手、ジョニー・ウィアー選手

Q7:今まで見たプログラムの中で「いいな!」と思ったものは?
プルシェンコ選手の「ニジンスキー」、ジョニー選手の「秋によせて」


選手へのパーソナルクエッションコーナーです。当時15~16歳くらいでしょうか。
ここにもヒントがありましたね。というか、結弦くん、過去の語録の伏線、回収しまくってない?(笑)


「ワールド・フィギュアスケート 49」
発行:新書館
発行年月:2011年9月


この号には、結弦くんとジョニーの対談が掲載されています。その中での結弦くんのこの言葉に注目。

羽生 ぼくはジョニーの「秋によせて」がとても印象に残っているんです。自分が目指すスケートにぴったりはまった、と言うのでしょうか。きれいだし、身体から音が出ている感じがしました。(P28より)

ここにも、「秋によせて」がでてきました。そして、「秋によせて」が、自分の目指すスケートにぴったりはまったと。「身体から音が出ている感じ」とは、誰でもない、今、羽生結弦がそう評価されているのですよね。

そして、この対談の中で、ジョニーが結弦くんのことを「長い手足を持つ彼の体型はまるでバレエ・ダンサーのようで、僕から見ると完璧なプロポーション」だと言ってます。そのジョニーも、若い頃は、クラシックダンサーのようなボディラインと言われていました。


「フィギュアスケート 日本男子ファンブック Cutting Edge 2011 Plus」
発行:スキージャーナル
発行年月:2011年8月発行


ところで、そのジョニーですが、結弦くんの「音」「音楽」との親和性について、こんなことを言っていました。まだ結弦くんが15~16歳くらいの頃です。

実は、もう数年前からユヅルのことを知っていて、みんなに「いい選手がいるよ」って言って回っていたんですよ。だから彼がジュニアチャンピオンになった時は、とっても自慢だったんです。彼は日本だけでなく、世界のフィギュアスケート界にとっても、輝かしい新星。

ユヅルは、ジャンプにしてもスピンにしても、素晴らしく才能に恵まれたスケーターです。でも僕がもっとも感心することは、彼がとても若いのに、あの年齢ですでに音楽を「感じて」いることですね。これは、とても稀な才能じゃないかな? スケーターを見る人が、「彼はあの指先からつま先まで、音楽を感じている!」なんて思うことは、とても驚くべきことなんです。

(中略)

そして、ユヅルが僕のことを憧れのスケーターだと言ってくれてること・・・聞きましたよ(笑) とても光栄に思っています。ちょっと前まで自分が若い世代に影響を与えるなんて、全く想像していませんでしたし、若い選手たちの目に自分がどう映るかなど。考えてもみなかったから! でも確かにユヅルには・・・僕が自分の中にあると思うもの、同じものを彼の中にたくさん感じるような気がします。(P94より)


結弦くんの「音楽を感じる」才能を、ジョニーはこの頃からすでに見抜いていました。そして、それは稀有な才能だと。ジョニーがスケート界に残したものに結弦くんがインスピレーションを感じ、それを継承していってくれる・・・結弦くんが今シーズンのプログラムに「秋によせて」を選んだことは、ジョニーにとっても、本当に嬉しい出来事だろうなと思います。


で、ちょっとおもしろいと思ったのが、これ。

「フィギュアスケート 日本男子ファンブック Cutting Edge 2012」
発行:スキージャーナル
発行年月:2012年1月発行



CE2012


Q3:ヒーローまたはアイドル
プルシェンコ、松岡修造さん、ジョニー


なぜか、プルさんとジョニーに挟まって、松岡さんの名前が!(笑) まだ、16歳くらい。修造さんと今ほどは親しくない頃だと思います。でも、結弦くんは、この頃から、松岡さんのこと好きだったんだ。そうか、どこか似た者同士的なシンパシーを感じていたのだろうか。どっちも熱い男だしな!(笑)


で・・・その修造さんですが、ちょうど同じ頃、結弦くんについて、こんなことを言ってるんです。

「フィギュアスケート 2012-2013シーズンオフィシャルガイドブック」
発行:朝日新聞出版
発行年月:2012年10月


羽生さんは、表現力がすごい。高橋さんのような天才型とはまた違う。一つひとつの手の動きを見ているだけで魅力的ですよね。ロシアの男子選手が見せるような表現ができる、今までにない日本選手なんだと思います。(P66より)

ジョニーは、ロシアの重鎮・タラソワから「秋によせて」というプログラムをもらった。その「秋によせて」を見た結弦くんは、これこそ「自分の目指すスケート」だと思った。そして、ジョニーを手本にした、結弦くんの「やわらかな表現」を見た修造さんは、それが「ロシアの男子選手が見せるような表現」だと感じたわけです。タラソワから、ジョニーへ、そして結弦くんへ繋がっていった宝石。これぞ、「Continues」であり、「Legacy」なのですね。

松岡さん、フィギュアスケートは門外漢のはず。そう考えると、修造さんの、この洞察力。お世辞抜きですごいと思います(笑) 専門外のことでも、一生懸命勉強して、選手に寄り添って、理解しようとする・・・そういう姿勢が、今の修造さんのスポーツキャスターとしての成功に繋がっているのでしょう。


「フィギュアスケート Days Plus 2010-2011 男子シングル読本
発行:ダイエックス出版
発行年月:2010年11月


プルシェンコのインタビューが掲載されています。結弦くんについて語っていました。

ー話は変わりますが、日本の若いスケーターたちは見ましたか?

プル:ユヅル!(羽生結弦選手)」

ーイエス、ユヅル。あなたの目から見た彼はいかがですか?

プル:僕はユヅルと一緒に練習したよ。彼はとてもキレイな4回転を跳んでいました。彼はとても良いスケーターです。いつか彼と同じ試合に出て、彼が僕を打ち負かす時が来たら・・・。その時僕は、彼にこう言おうと思っています。『Time is yours』。これからは君の時代だよってね。彼はとても良い。そして強い。今彼はまだ15歳で。あと3、4年もしたら競技者として素晴らしい時を迎えるでしょう。2014年の五輪までには、きっとさらに素晴らしい選手になっていると僕は感じています。


プルさんも、予言者ですね(笑) ソチ五輪で、結弦くんは団体戦でプルシェンコに勝ち、個人戦で金メダルをとりました。表彰式が、若き新皇帝の戴冠式のように見えたものです。プルシェンコからバトンを受け取った新皇帝は、フィギュアスケート帝国に大きな変革をもたらしながら、今や歴代最高の皇帝と言われています。でも、プルさんは、結弦くんにとって、今も絶対的な「神」です。今季のふたつのプログラムは、二人の神をあがめる皇帝の、宗教的儀式のような趣すら感じます。


古いスケート誌の資料を久しぶりに見てみましたが、あらためて思ったのは「羽生結弦の語る言葉に無意味なものはない」ということでした。少年時代に語った言葉は、今に必ず繋がっているのです。


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テーマ : フィギュアスケート - ジャンル : スポーツ

2018/09/02 13:35 | 公開練習・新プロCOMMENT(2)TRACKBACK(0)  TOP

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