伊藤聡美さんの講座ミニレポ ~羽生結弦衣装製作秘話
昨日、衣装デザイナー伊藤聡美さんの講座を初めて体験しました!
主催:NHK文化センター京都教室
受講日時:2019年5月12日(日) PM3:00~4:30
受講場所:キャンパスプラザ京都5階
講座名:フィギュアスケートを彩る衣装 ~デザイン哲学と製作現場~
事前に問い合わせたとき、整理券の配布はないとのことでした。なので、人数がそんなに多くないのかな?と思っていたら、なんのなんの田中さんの講座に負けないくらいの数の受講生でした。ただ、田中さんの講座と少し受講生の層が違うような気がしました。田中さんの講座は実質「羽生結弦の写真を愛でる会」なので、受講生は結弦くんの未公開写真を見たり、田中さんのゆづ愛話を聞くことが目的。でも、伊藤さんの講座は、羽生ファンが多いのはもちろんですが、ベリーダンスやバトントワラーの衣装を作っている人や、子供さんがフィギュアスケートをやっているから、衣装の話を聞きたいという人もおられました。なので、田中さんの講座よりは平均年齢が少し若いかな?(笑) という感じでした。あと、伊藤さんの実物はテレビでみるよりもお綺麗だったということをつけ加えておきます(笑)
では、以下、結弦くんに関係することのみですが、覚えている限りでレポします。
まとめておかないと自分でも忘れそうなので(汗)
<メンズの衣装>
男子はとにかく軽さ重視。
日本男子は、パンツはベロア素材が主流(伸縮性がある)。
トップスは普通の布素材でもOK。
通称「襦袢」と呼ばれているものの正式名称は「パワーネット」(日本人選手は素肌の露出を嫌がる傾向がある)。
<製作過程>
デッサン画は少ないと2~3枚、多いと10枚ほど描く。
選手に納品するのはデッサン画。パタンナーに渡すのは平絵(服の切り替え位置やパーツの配置などの要素を盛り込んだもので、衣装の細かい説明図)。
飾りをつけるボンドとして使っているのはGクリヤー(水洗いしても落ちにくい)。
用具としてピックアップスティックを使っている。
Gクリアーはアマゾンでも売っていますね。
→ コニシ ボンド Gクリヤー(箱) 20ml 14321
染色で衣装に色をつけてから、刺繍を施していく。
染色はエアブラシを使うこともあるし、一色染めや一方向の染めの場合は、漬けて染める。
以下は、各衣装についてのエピソード。
<ホプレガ衣装について>
色合いは羽生選手からの指定。オーロラ、緑、湖などをイメージした。
肩の部分の白いフリルは羽生選手からのリクエストで付け加えた(←やはり結弦くんはフリル好きと判明)。
<レクイエム衣装について>
立体感をだすようにドレープをいれた。フリルは少しずつ減らした。
<春よ来い衣装について>
フリルはエアブラシで染色。立体的にするために、生地にタックをつけドレープをいれた。
FaOI着用時のときと、それ以降でフリル部分を変えた。
胸の「黒」の部分は「桜の幹」を表している。また夜桜のイメージもだしたかった。
<SEIMEI衣装について>
羽生選手が特別にこだわった衣装。
最初は「SEIMEI」というプログラム名はなく、「陰陽師」というテーマだけで依頼があった。
A,Bと2案だした。
A:狩衣
B:狩衣風(伸縮性がある生地で狩衣風に作る)
デザイナーとしてはBがお勧めだったが、羽生選手はA案を選んだ。
軽くするために、見えない部分からはできるだけ布を削いでいる。
肩回りは何度も修正した。襟の色指定は羽生選手の要望。
平昌SEIMEIで装飾を変えた。五芒星を入れたのは羽生選手本人のリクエスト。
ドリームオンアイスで初披露だったが、狩衣は前例がないので、最初は双方が手探りだった。
改善点がでてくるたびに修正を重ねた。平昌衣装がベストの出来。
<オペラ座衣装について>
事故があった中国杯当日に依頼があった。
「青、黒、金」を入れた衣装で・・・というリクエストだった。
フィッティングは1回だけ仙台でした。
最初は大きな襟をつけるつもりだったが、羽生選手のリクエストで解禁襟となった。
完成間近のときは890グラムだったが、重すぎるので850グラムまで減らした。
試合の3日前に納品した。羽生選手は大阪で公式練習中だった。
徹夜の連続だったので、届けたとたんホッとしたのか高熱がでた。
自分のメンズの衣装を確立させてくれた衣装でもある。
<ノッテステラータの衣装について>
白鳥をイメージした衣装。
羽生選手ならOKかな?と背中を思いっきり開けてみたが、やはり羽生選手的には抵抗はなかった模様。
最初はそで先に飾りをつけていたが、ジャンプが跳べないということで、羽生選手が自分で取ってしまった。
「これくらいで?」と思うことでも、ジャンプに影響があることを勉強した。
<オトナル衣装について>
「色は青系で」というリクエストだった。
以前、羽生選手に送っていた「レクイエム」衣装のもう一つの案(デザイン)のリバイバル衣装でもある。
羽生選手もどちらにするか迷っていて、自分もいつか使いたいと思っていたデザインだった。
背中の柄は、氷に残されたエッジの跡などをイメージ。
オータムクラシック後に、羽生選手から「白っぽいので青を増やしたい」という要望があり、柄を入れてその上に装飾を入れた。
雪肌精の広告に、このデザインの衣装が使用されたことに大変びっくりした。
<オリジン衣装について>
プルシェンコのニジンスキーのイメージで金色をとりいれた。
羽根は100枚くらい製作。奥行をもたせるために、羽根にスプレーでぼかしをいれて色を重ねた。
パワーネットの上に黒のレースを重ね、少し部分的に切って透け感をだしている。
衣装の洗濯・保存は選手任せ。洗う人も洗わない人もいる。
ただ、衣装が戻ってきたときは、伊藤さんは勝手に(笑)洗っているそうです。
洗い方は手洗い。脱水は1分。それ以上脱水するとマズイ。
羽根はすぐにドライヤーで乾かすが、それでも死んでしまった羽根については取りかえる。
1~2月は一番ヒマな時期で、5~6月は一番繁忙期なのだそう。
すでに10着ほど進行中で、さらに10着くらい加わる予定だとか。
「一番忙しい時期に、こういうこと(講座)やってますが~」と会場の笑いを誘っておられました(笑)
1時間ほどの講座のあとは、質疑応答タイム。その後、衣装の写真タイム。
4人一組で持ち時間1分。あっという間であまり撮れませんでした(汗)
廊下にでたら、伊藤さんが受講生とツーショット写真に応じておられて、長い列ができてました。この日は午前中は神戸教室、午後は京都教室と掛け持ちで、お疲れのところ申し訳ないと思ったので、列には並ばずに帰りました。あれ? 田中さんのときは気にせずサインの列に並ぶのに、なんでだろ?(笑)
気が遠くなるほど、細かい作業なのだなあとあらためて思いました。「根気が勝負」みたいなことを言っておられましたが、なるほどと思います。衣装への愛がなければできませんよね。ジョニーがソチ五輪で自分のデザインした衣装で結弦くんが金メダルをとったことは、一生の誇りだというようなことを言っていますが、伊藤さんにとっても同じではないでしょうか。ご苦労も多いでしょうけど、KOSEの広告採用もそうですが、デザイナーさんにとって、そういう栄誉はひたすらに頑張ったことへのご褒美ですね。
伊藤さんも受講生の空気を察知(笑)してか、結弦くんの衣装を中心にお話をしてくれたのが嬉しかったです。とても素敵な方でした。羽生ファンにはお勧めの講座だと思います♪
左から、結弦くん、宮原さん、白岩さん、真凛さんのお衣装。
とにかく、細いです・・・。
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2019/05/13 12:07 | アーチスト・裏方・メディア | COMMENT(6) | TRACKBACK(0) TOP