福間洸太朗が語る「バラード一番と羽生結弦」

福間さんが結弦くんとバラード一番について語ってくださっています。



羽生結弦の「バラード第1番」再演。ピアニスト福間洸太朗が語る卓越度。(20200404 Number)

 昨季に引き続き今季もショート『秋によせて』、フリー『Origin』を演じてきた羽生結弦。それぞれ自身が憧れるジョニー・ウィアーとエフゲニー・プルシェンコへのオマージュを込めたプログラムであり、2人への尊敬の念を抱きながら取り組んできたが、完璧な一体感を得られぬまま、シーズン半ばにこんな思いを抱いた。

「僕のスケートじゃないのかな」

 そして、昨年末に行われた「メダリスト・オン・アイス」で『SEIMEI』を演じたとき、羽生は「ものすごく自分でいられるなと思って。伝説として語り継がれるような記録を持ってしまっている子たちなので、できれば寝させてあげたかったんですけど、ものすごく自分でいられる」ことを実感する。

 そこで「もう少しだけ、この子たちの力を借りてもいいのかな」と、あることを決断した。

 それはシーズン終盤の異例のプログラム変更だった。

 2月上旬、四大陸選手権から、平昌五輪で金メダルを獲得したプログラム、SP『バラード第1番』とフリー『SEIMEI』を再演することを発表したのだ。

福間は驚いたが、納得した。

 発売中のNumber PLUS 2019-2020シーズン総集編号ではピアニストの福間洸太朗に、この再演された『バラード第1番』について語ってもらった。

 2015年に行われた「Fantasy on Ice」で、羽生と『バラード第1番』でサプライズコラボレーションを披露した福間は、2016年の同アイスショーでも、羽生本人は怪我のため不在だったが、当時のSP世界最高得点を更新した2015年グランプリファイナルの映像に合わせて『バラード第1番』を演奏した。熱烈なスケートファンとしても知られている。

 その福間も今回のプログラム変更には、「驚いた」という。ただ、「いちアスリートとして結果を求めるのは当然のことで、スーパースラムのかかったあの状況においては必然だったのだと思います」と羽生の判断が適切だったと感じていた。

 '14-'15、'15-'16、'17-'18の3シーズン、羽生は『バラード第1番』を演じているが、その中でも福間は2季目のシーズン、2015年のグランプリファイナルの演技が特に印象に残っているという。

福間の眼に四大陸選手権はどう映った?

 そんな彼の眼には、今回の四大陸選手権の『バラード第1番』はどう映ったのだろうか。

 冒頭の4回転サルコウ、4回転トウループ―3回転トウループのコンビネーションジャンプにはGOE 4点を超える高い評価が付くなど、技術点では唯一の60点台をたたき出し、111.82点の世界最高記録でSP首位に立った。

 技術点もさることながら、芸術性や表現性などを示す演技構成点でも圧倒していた。

「手の使い方はもちろん、(体の)動きも全体的にとても滑らかで、洗練されていると思いました。どの瞬間を切り取っても、全く不安要素はありませんでしたし、まるで1つの芸術作品を見ているかのようでした」

 羽生はこの『バラード第1番』の冒頭で「静」を表現したのち、6拍子のメロディが始まると、ゆっくりと滑りだす。ピアノの美しい旋律に合わせるように、ジャンプやスピンを行い、まるで鍵盤の上を跳ねるかのように華麗なステップを踏んでいく。

 体力が消耗した終盤に曲のテンポが急に上がるが、激しいステップとあいまって、演技の盛り上がりは一気に頂点へ達する。ラストはコンビネーションスピンの後、両手を広げた決めポーズを見せた。

ピアノソロのクラシックは難しい。

 福間の言うように、まったく不安要素は見当たらなかった。むしろ、経験を積み重ねてにじみ出てくる味わいが感じられた。

「経験を重ねることで、表現においてはプログラムに深みやにじみ出てくるものがあります。葛藤しながら、いろいろなことを試しながら、それによって自分が追求するものも見えてくるでしょう。今、さらに説得力も出てきているのではないでしょうか。

『バラード第1番』のようなピアノソロのクラシックは、ビートが一定ではないので、スケーターの方々は、奏者の呼吸や癖を全体的に体に叩き込まなければ自分のものにできないですし、ビートが一定の曲(たとえばポップス系)よりも難しいと思うんです。バラード系で、テンポが一定しない楽曲を高いクオリティで自分の型にはめ、さらに音をしっかりと表現できているのは、羽生選手ならではの素晴らしさです」

表情・指先からショパンの苦悩が伝わる。

『バラード第1番』は生涯に作曲したもののほとんどがピアノ曲だった、天才作曲家フレデリック・ショパンの初期の代表作だ。

 1810年にポーランドで誕生したショパンは、20歳の頃、当時、政治情勢が不安定だった母国から逃れ、西ヨーロッパへ活動を広げた。その直後、故郷ワルシャワで暴動が起こり、ウィーンにいたショパンは多大な不安や憤り、悲しみに明け暮れた。

「実は祖国を出て最初に滞在したウィーンでも反ポーランド精神が芽生えていて、ショパンは思ったような活動ができないばかりか孤立してしまいました。その後、ポーランドの詩人アダム・ミツキェヴィッチの詩にインスピレーションを得て、『バラ―ド』第1番~4番を書いたといわれています。

 どの詩を『バラード第1番』に当てはめたかは確証されていないんですが、ミツキェヴィッチもロシア領内に追放されるなどの経験をしながらも、ポーランドの独立を願い、民族蜂起の思想に影響を与え、ショパン同様パリに移り住んだので、祖国愛、望郷の念など共感する点も大きかったと思います。そうした切迫感や追い詰められた人間の感情のようなものが、この『バラード第1番』に盛り込まれているような気がします」

 果たして、羽生がどこまで『バラード第1番』が作られた背景を理解しているのかは分からない。しかし、彼の“2分50秒”を見る限り、1つ1つのエレメンツ、表情、指先に至るまでの動きからは、ショパンの「苦悩」や激動の人生が伝わってくるような気がする。

 もはや羽生結弦の代名詞といっても過言ではない『バラード第1番』。

 果たして、今後、どんな「顔」を見せてくれるのだろうか――。



こちらにも、福間さんの記事が。
ファンタジーオンアイスに出演するきっかけを語っておられます。その部分のみ抜粋。


フィギュアスケーターの方々と共演することができたのも、そう。もともとファンだったステファン・ランビエルさんを成田空港でお見かけしたときに、勇気を出して声をかけなかったら。演奏会に招待しなかったら――、私が羽生結弦選手や他の素晴らしいスケーターと共演する機会も訪れなかったのかもしれません。


なるほど、ランビに声をかけた縁が、ファンタジーオンアイスの出演に結びつき、結弦くんとの出会いにもつながっていったのですね。

では、福間さんのバラード一番動画貼っておきますね。




ゆづ&ふくま


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●ヨーロッパ選手権
●全日本選手権

●インタビュー 彼らの流儀
・ダニール・グレイヘンガウス
・ブノワ・リショー
・リー・バーケル
・鈴木明子

●スペシャルインタビュー
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