回転不足とは何か ~10年前から指摘されていた深刻な問題点
ルール改正で、プレロテに厳しくなるのでは…という声もありますが、ジャッジの間ではかなり以前から問題視されていたらしい。昔からプレロテで跳ぶ選手がいなかったわけではない。ただ、ここにきて問題視する声が高まってきたのは、多回転時代になって、目に余るほど酷いチートジャンプを跳ぶ選手が増えてきたことがあるかと思います。
2011年の日本経済新聞の記事です。今から10年近く前のですが、今も問題点は同じです。
2011年の記事。
— みずほ (@traveler_mizuho) June 3, 2020
以前から下回りは問題視はされていたようです。
「随分前から主張しているけれど、踏み切る前の回転不足がまだ、きちんとチェックされていない」
中にはまだ足が離れていないのに、既にジャンプしているかのように見せる"テクニック"を持った人がいる。https://t.co/mlzP7BQB6c
フィギュア、「回転不足」って何なのか (2011年11月11日 日本経済新聞)
■07~08年シーズンから判定厳しく
回転不足が広く一般に認知されるようになったのは、4シーズン前ぐらいからだろうか。新採点方式が適用されるようになった2004~05年シーズンからジャッジが回転不足を見るようになってはいたが、このころから急に判定が厳しくなった。
浅田真央(中京大)、安藤美姫(トヨタ自動車)らの跳ぶ3回転フリップ(またはルッツ)―3回転ループの連続ジャンプは06~07年シーズンは認定されていたのに、07~08年シーズンから2つ目の3回転ループが、かなりの率で回転不足をとられ、翌シーズンはさらに厳しくなった。
日本勢のライバルである金妍児(キム・ヨナ、韓国)の3回転フリップ(またはルッツ)―3回転トーループは回転不足をとられず、評価は上がる一方……。日本のファンがルールに回転不足があることを知ったのも、その辺りからだろう。
ジャンプとは「踏み切る足のブレード(スケートの刃)が氷から離れた瞬間から、着氷する足のブレードが氷に着くまで」をいう。ジャンプを見る際、ブレードが氷を離れた時点を覚えておき、どの角度でブレードが着氷したか、を基準に判断すればいい。
ただし、ジャンプにかかる時間はせいぜい1秒ちょっと。この認定を担当するためだけに技術審判を3人も配置し、この3人だけはスロー再生映像を見ることできる。
■ジャンプを跳ぶ体勢に入る軌道などは人それぞれ
素人が肉眼で回転不足を判断できなくてもおかしくない。専門家でも、見にくい角度にいたりすると、判断がつきかねることもある。
演技だけでなく、ジャンプを跳ぶ体勢に入る軌道、踏み切る位置は、選手それぞれ違う。プログラムが違うのだから、みんなが同じ場所で同じジャンプを跳ぶわけではない。「ここからここまでで回転不足を測る」と規定するには無理がある。
たとえばフリップジャンプ。前向きで進んできて、ジャンプを跳ぶ直前に後ろ向きになって、右足のつま先をつき、左足の内側エッジで踏み切るジャンプ(右利きの場合)だ。
■高橋、小塚はオーソドックスだが
高橋大輔(関大大学院)と小塚崇彦(トヨタ自動車)は比較的オーソドックスで、細かいステップや動きを入れながらもわりと真っすぐ進んで、跳ぶ直前にクルッと後ろ向きになる。
一方、織田信成(関大大学院)はクルクルと何度か回りながら、いつの間にか右足をついて左足で踏み切っていたりする。
高橋や小塚は比較的簡単に踏み切る瞬間と着氷の瞬間を目視できる。だが、織田はどこで跳び始めたのか分かりにくい。
2分の1回転以上の回転不足(down-grade、図の21の位置)は、明らかに前のめりで着氷するので分かりやすいが、わかりにくいのが、4分の1回転以上、2分の1回転未満の回転不足(under-rotation、図の22の位置)。どちらも背中から着氷はしている。
■難しい「cheated jump」の判別
大抵の回転不足はこの範囲だ。バンクーバー五輪シーズンまでは、under-rotationも4回転ジャンプの場合、3回転分の基礎点しかもらえなかったが、昨シーズン以降、4回転ジャンプの基礎点の70%は残るようになった。
4回転ジャンプのように難しいジャンプや、ミスジャンプの場合はunder-rotationも比較的たやすく判別できるのだが、問題はフィギュア用語で「cheated jump(cheat は『だます、不正をはたらく』などの意)」と呼ばれるもの。
under-rotationの位置で着氷しているのだが、体が柔らかく、器用な選手の中にはうまくつま先でクイっと回り、フリーレッグ(着氷しない方の足)も流れ、いかにもきれいに決まったかのように見える。専門家でなければ、相当、そこだけを真剣に見ていないと正直、見過ごしてしまう。
04~05年シーズンに新採点方式が導入される前、「cheated jump」が横行した。世界選手権や五輪でも、今の基準では「under-rotation」となるジャンプをいくつか跳んでいても、メダルを獲得している。
平松さんによると、ISU内でも問題視されていたそうだ。そこで新採点方式では回転不足に減点が科され、そのルールが浸透するにつれて、判定も厳しくなってきたのだという。
コーチもしつこく指導するが、筋力の弱い女子は緊張や疲労で、3回転することも厳しかったりする。特にジュニアの試合ではunder-rotationはよくある。
昨年12月、ジュニアグランプリ(GP)ファイナル4位の庄司理紗(西武東伏見FSC)のフリーは一見、クリーンな演技だったが、7個の3回転ジャンプ中4個がunder-rotation。
■踏み切る前の回転不足のチェックは甘く
今季GPシリーズ中国大会の村上佳菜子(中京大中京高)も靴の不備もあって練習不足だったからなのか、7個の3回転ジャンプ中4つがunder-rotationだった。そのうち、転んだのは1つだけで、後は着氷は決まっていた。under-rotationが多かったため、2人とも思ったより得点が出なかったのである。
しかし、指導者の間ではまだ、「回転不足判定が甘い」という人が少なくない。着氷時の回転不足には厳しい一方、「随分前から主張しているけれど、踏み切る前の回転不足がまだ、きちんとチェックされていない」(平松さん)。
フリップだけでなく、トーループ、ループ、サルコーの4つのジャンプは順回転して勢いをつけてから跳ぶ選手が少なくない。中にはまだ足が離れていないのに、既にジャンプしているかのように見せる"テクニック"を持った人がいる。
しかし、そこにはISUもなかなか本腰を入れない。踏みきり前の判定は、着氷時よりも難しいこともあるのだろう。
原真子記者ですが、なかなか興味深い記事ではあります。
着氷時の回転不足には厳しい一方、「随分前から主張しているけれど、踏み切る前の回転不足がまだ、きちんとチェックされていない」
世界選手権や五輪でも、今の基準では「under-rotation」となるジャンプをいくつか跳んでいても、メダルを獲得している。
2011年の記事にも関わらず、今も問題点は何も改善されていないのがわかります。
ちょろまかしジャンプを跳んでいる選手が堂々と五輪メダリストやワールドメダリストになっている。
2011年よりずっと前から、ジャッジからプレロテが問題視されていたにも関わらず、ISUは放置した。そして、今プレロテフルブレジャンプの大流行で、子供達に最初からチートジャンプを教えるコーチまで現れる始末。正統な技術は絶滅寸前です。
中にはまだ足が離れていないのに、既にジャンプしているかのように見せる"テクニック"を持った人がいる。
下で回ってるのに、上で回っているかのように見せるのもひとつのテクニックなのね(笑) でもスロー再生したら丸わかりだし、中にはスロー再生しなくてもわかるのもあるわよね。ディレイド回転のジャンプを跳んでいても、着氷だけをみてURをとられてしまう選手もいれば、氷上で1回転ちょろまかしていても、着氷だけみてGOE3~4もらう選手もいる。マトモに跳んでる選手はやってられません。結弦くんの完璧な4LzにGOE+3で、シェルバコワ選手の4LzにGOE+4とか、何の冗談かと思いますね。
ジャンプ技術の進化といいますが、ちょろまかしジャンプが増えての四回転時代ならば、反対にいえば、正統な技術で四回転を跳べる選手は、実質的にはそれほど増えてはいないのかもしれません。単にちょろまかすのが上手い選手が増えただけで。
原真子氏は、最後こんな言葉で締めくくっています。良い記事なのにねえ。この締めで台無しに(笑)
さて、ファンが回転不足に"通"になることは、個人的にはお薦めしません。純粋に観戦を楽しめませんから。
もし、好きな選手の得点が思ったよりも低かったら、「回転不足をしちゃったのかな?」と思うくらいにした方がいいのではと思いますが、いかかでしょうか。
デーオタライターらしいとも言えますが、こういう風に割り切ってないと、長年スケオタなんてやっておれないのかもしれません。割り切れない人達は、ストレスでフィギュアから去ってしまう。この原真子氏と同じように「採点なんて気にせず、演技の美しさだけを楽しんでほしい」と言った人を2人知ってます。荒川さんとジョニーです。つまり、彼らもルールに詳しくなったら、楽しめなくなることをわかっているのです。ルールに精通すると楽しめなくなる競技って、フィギュアくらいでは。
昔と違って、今は動画サイトなどでリプレイを何度もチェックできる。ネットの普及で、スケオタが自分の疑問点を他のスケオタと共有できるようにもなった。以前よりスケオタの目は採点の妥当性に対して厳しくなってる。昔のように、採点の疑問点をなあなあで済ますのは難しくなった。
あまり期待はしていませんが、今回のルール改正で、チートジャンプが少しでも取り締まられることを祈ります。
ちょっとここで独り言です。
2016年にカナダ人ISU副会長のデヴィッド・ドレ氏が75歳で亡くなり、アレクザンドル・ラケルニク氏が副会長に選出されました。このドレ氏というのは、クリケットの理事で、オーサーの選手時代からの後ろ盾だったらしい。このドレ氏の存在は、オーサーがコーチ業をするあたっても心強い援軍だったのは間違いありません。
考えすぎかしれませんが、結弦くんがジャッジにひどい塩採点をされるようになったのは、ドレ氏がなくなった後の2016-2017シーズンからではないかと思うのです。2015-2016シーズンまでは優遇もされてはいなかったけど、さほど冷遇もされていなかった。2015-2016シーズンに日本二番手男子がシニアデビューし(偶然かもしれませんが、ガセブンの珍バイト記事がでたのは2016年1月でした)、ネイサンがシニアデビューしたのは2016-2017シーズン。オーサーが後ろ盾を失くした時期と、日米のスケ連が自国の推し選手を猛烈にプッシュし始めた時期が不運にも重なっています。関係あるかどうかわかりませんが。
もちろん、選手を守るのは第一に国であり、コーチではありません。でも、昔はオーサーももっとコーチとして強気だったように思います。教え子があからさまに激辛採点されてるのに、オーサーが手をこまねいているように感じてもどかしい。でも、ドレ氏という後ろ盾を失ったことも影響しているのではないでしょうか。ドレ氏がいたら、平昌五輪のハビのメダルの色を銅にされたり、結弦くんに対する採点をアメリカと日本にここまでやりたい放題されることもなかったのでは…と思ってしまいます。結弦くんに関しては、日本という国は全く援護射撃してくれませんから。背後から背中を狙って撃つことはあっても。
コロナ禍で、フィギュア界も大きな影響を受けることになるでしょう。
せめて、それが良い方向に変わるきっかけになってくれるといいのですが。
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2020/06/05 09:30 | コラム・雑誌記事 | COMMENT(12) TOP