現代ビジネスのコラムで、”神ラマン”小海途さんを取材した記事です。
良記事なので、貼っておきます。
フィギュア界の「神ラマン」が自ら選んだ羽生結弦のベストショット
『必ずまた春は来る』という思いを込め(20200820 現代ビジネス)「表現者」羽生結弦が作り出す空気を伝える
世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスの影響で、東京オリンピックをはじめ、国内外ほとんどすべてのスポーツイベントが延期や中止、縮小などの変更を余儀なくされている。
そんななか、多くのアスリートが自粛中でもできる自身のトレーニング方法を紹介したり、普段は明かさないプライベートを配信したりと、リモート社会に少しでも貢献できるような活動をここ数ヵ月間重ねている。
フィギュアスケートの羽生結弦もその一人だ。
5月には、日本スケート連盟の公式ツイッターを通じて、自身の歴代プログラムの振り付けを披露。動画を再生したファンからは「力をもらえた」「ステイホーム頑張ります」「羽生結弦さんの存在そのものが明るい未来の希望」といった明るいリプライが相次いだ。
さらに羽生は7月、ISU(国際スケート連盟)が新設した「スケーティングアワード」で初代の最優秀選手を受賞するなどファンに明るいニュースを届けている。コロナ禍でも存在感と影響力の高さを示したアスリートの一人だろう。
「実績はもちろん誰もが認めるところですが、羽生結弦選手はアスリートであると同時に表現者だと僕は考えています」
そう語るのは、スポーツニッポン新聞社の小海途良幹(こがいと よしき)カメラマンだ。羽生を追いながら、その表現方法やプログラムに組み込まれた意図、時にはファンの反応まで含めた情報を自分なりに分析し、あらゆる構図の写真を撮り続けてきた。
その結果、羽生の生き生きとした表情や感情を切り取った写真はいつしか「神写真」と称され、小海途カメラマン自身も「神ラマン」などと呼ばれるようになった。
その「神ラマン」が、快心のショットだと言う1枚がある。今年2月、男子フィギュアで史上初のスーパースラム(ジュニアとシニアの主要国際大会を完全制覇)を達成した四大陸選手権で撮影されたものだ。
「シャッタースピードを落として幻想的に仕上げられたら」とスピンの最中を狙い、意図通りの瞬間をとらえた「してやったり」の一枚だ。
「羽生選手を背景に溶け込ませることで、『表現者』である彼が作り出す会場の空気を伝えたかった。彼の演技は点数や数字に反映されるのは当然ながら、必ず何かを人々の心に訴えます。そこが彼を羽生結弦たらしめている部分だと感じています」
そんな意図のある「神写真」を撮れるようになるまでには、様々な試行錯誤があったという。
小海途カメラマンが本格的なカメラに触れたのは大学時代だという。バックパックを背負って一人旅をしていた頃に、お世話になった先輩にニコンのボディとレンズを譲ってもらった。
「それからは必ずカメラを持って旅に出ることになりました。当時はポジフィルムでしたから、持ち運びと保管が大変でしたけど。今はデジタルになって楽になりましたし、旅には必ずカメラを持っていきます」
旅行が趣味で学生時代だけで十数ヵ国を訪れた。世界の街角でカメラ片手に研鑽を重ねた小海途は、動の中の一瞬の静を切り取るスポーツカメラマンを志して、スポーツニッポン新聞社の扉を叩く。
偶然を逃さずとらえた傑作
入社後、スポーツカメラマンに必要な感性を磨くうえで、阪神タイガース担当に配属された4年間は、特に重要な時間だったと本人は振り返る。
「上司に『(担当チームが)勝っているときは、誌面に載る絵は勝手に決まる。難しいのは負けが続いてる時期だ』とアドバイスをもらっていたんです。確かに勝っているときは、勝ち投手や勝負を決めたバッターを撮るほか、大歓声のスタンドやヒーローインタビューなど被写体は豊富です。でも負けているときは本当に難しいんです」
選手や監督の悔しそうな表情はもちろん、スタンドにもレンズを向けファンの様子も抑えた。ときにはネタを拾うために球場の外まで出て、粘り強くベストショットを求め続けた。
そんな小海途の粘り強さが、幸運を呼び込んだとしか思えない写真がある。昨年11月、札幌で開催されたNHK杯で撮影され、「神写真」と絶賛された1枚だ。
「エキシビションのときの写真なのですが、衣装が印象的だったので袖越しの羽生選手の表情を撮りたかったんです。構図としてはある程度、意図したものでした。ただ、途中にハイドロブレーディング(低い姿勢で滑る)をしながら氷のかけらを集めて、それを宙に撒くいう場面があるんです。そのために羽生選手が頭上で握っていた氷の粒が少し落ちてきてちょうど舞うように入り込んでくれた。幸運でした」
果たして幸運だけなのか。幸運を待ち続ける忍耐力が結実したのではないか。そのあたりは「正直、わかりません」と小海途は少し照れたように笑う。
「確かに『偶然の産物』という写真は少なくないですし、この写真についても、そう言う人もいるかもしれませんね。でも、それが偶然なら絶対にその偶然は逃したくない。
羽生結弦という対象は、アドリブも多いですし、どの大会でもこちらのイメージを超えるようなものを見せてくれる。それは、僕ら凡人には予測がつかないんです。決して目を離してはいけないということだけはわかっています」
10月にアメリカで開幕予定する今季は、羽生にとっては五輪3連覇が懸かる2022年の北京冬季五輪のプレシーズンでもあるが、スケジュールはコロナ禍の影響もあってまだ流動的だ。各大会の出場選手は開催国に国籍を持つ者、あるいは練習拠点を置く者に限られるという報道も出ている。
そんな状況下だからこそ、小海途は、このNHK杯の写真を紹介してくれたそうだ。その理由は、エキジビションで使用された曲目にあるという。
「松任谷由実さんの『春よ、来い』なんですよ。もちろんこの大会の頃は、まだ新型コロナウイルスは蔓延していなかったので、直接の関係はないのですが、羽生選手は震災など天災があると必ず現地を思って演技してくれました。いろいろな意味で厳しいシーズンになることは間違いないと思います。でも、『必ずまた春は来る』という思いを込めて、この写真を選びました」
(スポーツライター 竹田 聡一郎)
【プロフィール】
小海途良幹(こがいと よしき)
1983年三重県生まれ。早稲田大学卒。株式会社スポーツニッポン新聞社に入社後、関西で阪神タイガースや競馬の担当などを経て2015年から東京本社勤務に。フィギュアスケートの他にも藤井聡太四段(当時)が公式戦連勝記録を作った際のフィーバーを撮った写真が東京写真記者協会賞で文化芸能部門賞文化芸能部門賞を受賞するなど、多くのスポーツの現場で活躍する。東京五輪の舞台でもっとも撮りたいアスリートは大坂なおみ。写真集『YUZU'LL BE BACK II 羽生結弦写真集2019~2020 (Dancin'on The Edge3)』(スポーツニッポン新聞社)が好評発売中。インスタグラムのアカウントは「yoshiki_kogaito」小海途さんは早稲田なんですね。学部は違うだろうけど、結弦くんの先輩ね。そういえば、田中さんも早稲田だった。カメラマンさんに限らず、なんとなく報道畑には早稲田出身者の人は多そうではあります。
小海途さんの上司である長久保さんのコラム一覧のリンクも貼っておきます。
8月9月発売の羽生本。


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テーマ : フィギュアスケート - ジャンル : スポーツ
タグ : 2020-2021_season
2020/08/20 10:10 |
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