「プロフェッショナルであること」「誠実であること」~アイスショーについて思うこと
スターズオンアイス、そしてアイスショーの在り方について思うことを少し書きたいと思います。
流れとしては、以下の2つの記事の続きになります。
雪肌精第二夜は「透明感」&「SOI開催の奇跡」という美談記事に思うこと、everyアイスショー動画
http://bltraveler.blog63.fc2.com/blog-entry-4471.html
「SOI開催の奇跡」という美談記事に思うこと その2
http://bltraveler.blog63.fc2.com/blog-entry-4474.html
まず、スターズオンアイスとはなんぞや…というところから。
スターズ・オン・アイス ウィキペディア
※ 羽生結弦は2010~2014年まで5年連続で出場しています。
SOIのWIKIに跳んで、他の出演者をすべてみていただくとわかりますが、テレビ東京が主催していた2014年までは「一流北米スケーターが中心の伝統あるアイスショー」でした。しかし2015年にTBSに放映権が移ってから、様変わりをしてしまいます。
北米のプロスケーターの出演は激減し、日本人スケーターが増え、本来は「最低でもワールドメダル持ちの、北米スケーターを中心にした一流が集うアイスショー」であったのに、いつのまにかその前提は崩れ、誰でも出演できる、どこが「スターズ」なのかわからない平凡なアイスショーになってしまいました。TBS主催になってから、SOIの格落ち感はハンパありません。
しかも、今回のSOIは海外スケーターがゼロ。それでもなんとかショーの体裁を保てたのは、結弦くんが出演してくれたからにほかならない。「もし羽生結弦がいなかったら…」と想像したら、演出の佐藤有香さんはゾッとしてるのではないでしょうかね。
某フィギュア雑誌のインタビューで、佐藤さんはこんなことを言っておられます。
日本選手の活躍により、フィギュアスケートは一般的にも認知され、多くのイベントが頻繁に開催されるようになりました。とてもうれしいことではありますが、気を付けなければいけない点もありますね。イベント数の増加により選手たちがある程度の成績を収めることで当たり前のようにショーに出られるという傾向になっています。出演の依頼を受けるのは特別なこと。チケットを購入して観に来てくださるお客様の前での演技はプロフェッショナルとしてのお仕事になります。そして毎公演”この1回”のショーをご覧いただいている方々に100%の誠意をもって滑ることが大切だと思います。
佐藤さんは現在アメリカを拠点にコーチをされていますが、彼女は長年アメリカでアイスショーにも出演されていた。古き良き時代のアメリカのアイスショー全盛期も、フィギュア人気の凋落で次々とアイスショーが無くなり、北米唯一のアイスショーのSOIすら瀕死の状態である今のアメリカの現状も、すべて見てきた米国フィギュア界盛衰の生き証人です。
彼女は今の日本のフィギュア人気も「永遠」を約束されたものではないことを知っている。だからこそ、彼女は若いスケーターに「アイスショーの出ることは当たり前のことではない」「客の前ではプロとしての演技を見せるべき」と、やんわりと苦言を呈しているのかなと思いました。
アイスショーは試合ではありません。エキシビションでもない。エンタメの興行です。十代であれ、現役選手であれ、ショーに出演した以上は、高額なチケットに見合う、プロフェッショナルとしての仕事をしなければならない。至極当たり前のこと。しかし、それがわかっていない選手がほとんど。いや、日本はプロスケーターですら、その意識をどこまでもっているか疑問です。
実際、特別篇などでバックヤードも放送されましたが、ほとんどのスケーターがまるで文化祭のノリだなと感じました。演技はお遊戯発表会で楽屋には緊張感なし。普段アイスショーには出れないレベルの選手も多く出演していたので仕方がない面もありますが、それにしても、本当に結弦くんが出なかったら、このアイスショーはどうなったのだろうかと思いました(その前に、結弦くんが出ないのなら、中止になっていたでしょうが)。
毎公演”この1回”のショーをご覧いただいている方々に100%の誠意をもって滑ることが大切
結弦くんもいつも言ってますよね。そのときに足を運んでくれた観客の皆さんの前で滑る演技は「この1回」なのだと。だからこそ、結弦くんは、常に全力で100%の誠意をもって滑っているのです。「誠意」は観客にも伝わるもの。「誠意」を感じない演技に、人は心を打たれることはない。残念ながら、そんな誠意をほとんどのスケーターから感じることはできませんでした。
断言する。ありとあらゆる能力の中で最も大切なのが誠実さだ。どれだけ優秀な人物でも誠実でなければ意味がない。他の全ての能力は誠実さという土台の上にのみ成り立つ。どんなときも誠実でいよう。常に誠実でいるのは大変だけど、誠実さは大変な思いをしてでも守り抜く価値のある能力だ。誠実であれ。
— Testosterone (@badassceo) August 25, 2021
そういえば、誰とは申しませんが、自分がメインのコラボの振付が覚えられなくて、夜中まで女子選手たちを練習につき合せたあげく、結局横浜初日のコラボに穴をあけた男子選手がいました。過去にも聞いたことがない、前代未聞の珍事です。佐藤さんも内心はプロ意識の無さに呆れていたでしょう。しかも、特別篇のバックヤードで、迷惑をかけた当の本人が反省の色もなくヘラヘラ笑っていたのに、私はさらにドン引きしました。他のエンタメの世界でそんなことをやらかしたら、もう次のオファーはこない。それでも日本では仕事がくる。それくらい日本のフィギュア界隈がぬるま湯だということ。
コロナ禍でアイスショーに行くことが減って、日本のアイスショーのコスパを冷静にみる人もでてきています。アイスショー1回の金額で、他のエンタメなら複数楽しめることに気づいたという人も。日本のアイスショーは高額です。一般層が気軽に手をだせる金額ではありません。ぶっちゃけ、スケオタを”冷静”にさせてしまったら「終了」のエンタメなのです。
「しばらく現地観戦しないと禁断症状がでる」レベルのスケオタか、「推しを見るためなら金に糸目はつけない」というコアな推しがいるファン。チケット購入を支えているのは、ほぼこの2種類の人達。「一度ホンモノを見てみたい」と一般人まで現地に足を運ばせる羽生結弦という存在が稀有なだけです。
2014年からの、スターズオンアイスの開催状況を抜き出してみました。
2014年4月 東京(4公演)、名古屋(3公演)、大阪(3公演) ※羽生IN
2015年1月 大阪(4公演)、東京(3公演) ※Dさん座長
2016年1月 ニューイヤーズオンアイス(2公演) ※羽生IN
2016年4月 大阪(3公演)、東京(4公演) ※Dさん座長
2017年1月 東京(3公演)
2018年4月 大阪(3公演)、横浜(4公演)
2019年3月-4月 大阪(3公演)、札幌(3公演)、石川(3公演)
2020年3月-4月 大阪(3公演)・愛知(2公演)・八戸(3公演)→中止、横浜(4公演)→延期 ※八戸・横浜のみ羽生IN
2021年4月 横浜(4公演)、八戸(3公演) ※羽生IN
「SOIへの羽生結弦の出演は悲願」だなんだと言ってますが、TBSに主催が移った当初の2015年と2016年はDさんがメインでした。TBSにとって、結弦くんの出演はそのときは「悲願」ではなかったはずです。しかし集客が期待ほどではなかった。
それが、2016年のNYOIに結弦くんに出てもらったら大入り満員で大儲けした。CSの契約も激増した。それに味をしめたTBSが「羽生結弦にSOIに出てもらうこと」が悲願になったというだけなのです。
私はというと、2010年から5年連続で結弦くんがSOIに出ていたことから、2015年も結弦くんが出ると思いこみ、うっかりSOIのチケットとってしまった。結局彼はINしなかったけれど、チケットがあるので一応見にいった。感想をいうと、前に卓袱台があればひっくり返したくなるくらいつまらなかった(結弦くんがいないからではない。彼がいなくてもそれなりに楽しめたショーは他にある。あくまでもSOIの問題)。2013年と2014年もSOIを現地で見ましたが、全く別ものになっていました。「もう二度とSOIのチケットは買わない」と固く心に決めたものです。
ついでにいうと、NYOIは、「メダルウィナーズオープン(MWO)」の翌日に開催されたアイスショーでした。MWOもNYOIも、チケットの売れ行きは芳しくありませんでした。羽生結弦INの発表とほぼ同時に、TBSとIMGが、売れてないMWOのチケットとNYOIのチケットを抱き合わせ販売するという、姑息で阿漕な売り方をしたことを私は忘れていません。ちなみにNYOIのチケットは、羽生IN発表と同時に見切れ席まで瞬殺でした。

ちなみに、このプロスケーターのコンペ、MWOはこの2016年の開催が最後になりました。
昨日フレンズオンアイスの初日でした。現地さんの声をいくつか。
@着席〜
スタンドはグループごとに一席空けてるのね。SARだけ詰め詰め。
なお、一席空けてるけどアリーナもスタンドも後列半分以上は空いてる。。。
@どのくらい少ないかというと、開演前もザンボ中もお手洗いに全く並ばなかったくらい。。。多分キャパの1/4くらい?
@私も行って来ました。アリーナとスタンド席4分の1くらいで、空席がなんだか胸に刺さって泣けました 楽しかったんですが
@規制退場は東西スタンド2階3階が最初のグループ。これで多分100人強なので全く混まなかった。
FOIで集客の要になっていたDさんが不在であることや、緊急事態宣言下であることや、金曜の夜であることを考慮しても、小さな箱の新横で、客入りがキャパの1/4程度というのはなかなか厳しい。しかし、コロナ禍は今年で収束するわけではないでしょう。そう考えると、日本のアイスショービジネスは岐路にたっているといえるかもしれません。
すでに、コロナ禍前から、アイスショーの勝ち組と負け組は鮮明になりつつありました。それにコロナ禍が追い打ちをかけた。高額なチケットゆえに、それに見合う満足を提供できなければ生き残れない。「プロフェッショナル」「誠実さ」を忘れたショービジネスは、いずれ淘汰されてしまうでのではないでしょうか。
結弦くんも愛用の「AIRマスク」。たぶん結弦くんは小さめサイズじゃないかな。
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2021/08/28 09:20 | アイスショー・イベント | COMMENT(12) | TRACKBACK(0) TOP