羽生結弦選手 3年後の決断 その2 ~浅田真央選手復帰会見に寄せて~
前回の続きです。「その2」とありますが、今回で終わりではなく、もう少し続きます。
この記事は、外に向けての発信というより、私自身の覚え書きの意味あいの方が大きいので、申し訳ないのですが、空気読まずに長くなります(汗) 読んでやってもいいよ~という方のみ、お付き合いください。
前回、「フィギュアスケート Days vol.18」誌上での、「平昌で引退宣言」にショックを受けたと書きました。
発売日は2014年6月ですが、そのインタビューに答えているのは、4月10日頃と思われます。
その数日前(世界選手権直後)の、報道ステーションのインタビューで、松岡修造さんの「平昌後、現役を続けるか?」という質問に、「ハーフハーフです」と答えていたから、少し期待してしまっていたのかもしれません。
彼の目標とする「五輪二連覇」を達成したときに引退する・・・それが一番綺麗な退き方。
平昌後も続ければ、年齢的に、それまでより体力面で厳しくなる。それは確かです。
引退しても、アイスショーで見ることはできる。
彼の冠ショーであるTOIは毎年開催されるようになるでしょう。
彼の出演するアイスショーのテレビ放送は絶対あるだろう。
彼なら、解説者としても活躍するのは間違いない。
長く現役を続ければ、怪我のリスクも一層大きくなる。
プロスケーターなら、怪我の心配もそれほど多くない。
シーズンが始まるたびに、結弦くんが怪我するたびに、ハラハラすることもない。
私は、彼が勝つところを見たいわけじゃなくて、彼の演技を見たい。
だから、競技にこだわる必要はない。
なのに、なぜ、こんなにショックなんだろう?・・・自問して見えてきたことがありました。
ソチシーズンで引退した織田信成さんが、こちら ↓ のインタで、こんなことを言ってました。 フィギュアスケート日本男子ファンブック Quadruple2015 (2014/11/27)
今までずっと、僕はフィギュアスケーターとして生きてきたので、技術が落ちてしまうということが怖いんですよ。引退して9ヶ月経ってもその怖さから抜け出せずにいるんです。まだ、選手時代の名残というか、自分の中に強迫観念が残っているのかな。ちょっと休んで4回転が飛べなくなったとすると、「自分は生きている意味があるのかな・・・」くらいに思っちゃうので(笑) そこまで突き詰める考え方は、よくないとは感じているんですけど。
競技を引退すると、練習量は減り、コーチとの契約も切れる。通常、技術の進歩は止まります。それからは技術が落ちないように、維持をしていくことになる。そこまで技術を積み上げるのに、二十年近くかかっても、油断すれば落ちるのは簡単です。昨年の「メダル・ウィナーズ・オープン」で、かつては一流選手だったはずの海外女子スケーターが、まだ二十代なのに、単独の三回転もまともに飛べなくなってるのを見て、ちょっと悲しくなりました。真央ちゃんの復帰でも言われるように、1年の休養ですら、技術を元の状態に戻すのは容易ではない。
あれだけプロ意識の高い結弦くんのこと。
引退しても、そう簡単に技術を落とすようなことはないでしょう。
でも、どこかで「勿体ない」と思ってしまう自分がいるのです。
23歳の若さで、不世出の天才スケーターの技術の進化が止まってしまうのか・・・と。
まだ、その先に成長の余地があるかもしれないのに。
プロになったら、四回転を組み入れたプログラムをもう見ることはできないかもしれない。現役の今でさえ、シーズン前にSPなどの競技プロをお披露目するときは別として、ショー用のプログラムでは四回転を組み入れていない。プルシェンコが、「五輪チャンプのくせに、ショーで3Tしか飛ばない奴がいる」と嘆いていたけれど、プロになれば、完成度が優先される。元々、照明が暗く、狭いアイスショーのリンクは、四回転には不向き。もちろん、結弦くんの魅力はジャンプだけじゃない。それに、ショーの最後に、観客サービスで、四回転を飛んでくれるかもしれない。でも、あの芸術的な四回転を、プログラムの中でもう少し長く見ていたい・・・という気持ちがある。いや、彼のことだから、もしかしたら、プロ転向後は、四回転をショープログラムに組み入れてくるのだろうか・・・。
2つ目は表現力。こちらは、競技を引退した後でも、いくらでも成長できる余地がある部分です。
一流といえる選手なら、その選手基準で・・・ですが、年齢とともに表現力はあがっていくものです。
小塚選手も、織田さんも、若いときよりも、今の方が表現に深みがでるようになったと思います。
結弦くんも、年々表現力は増している。スケーティングの向上で、さらに磨きがかかってきた。
これから年齢を重ねていったら、どんなに情感豊かなスケーターに成長するのでしょう。
私は、彼の技術力と表現力が最高の地点で融合した、その到達点を見たかったのだと気付きました。
それは23歳よりもう少し先なのではないか・・・私は、そう考えていたのです。
小塚選手も織田さんも高橋さんも、演技に円熟味が増したのは、20代半ばになってから。
その両者を求めるなら、それはやはり競技プロでしか見れないものではないだろうかと。
そして、3つ目。ショーで滑る結弦くんも素敵です。でも、私は、戦う彼も好きなのです。
彼に堕ちたのも、あのニースワールドの”討ち入りロミオ”。そこからずっと彼の戦う姿を見てきた。
試合のピリピリした緊張感の中で、「勝利を獲りにいく」ときの、全身からメラメラと発する炎のようなオーラ。
青嶋氏のいう「天使の姿をした野獣」がリンクで咆哮する姿は、ゾクゾクするほど、魅力的です。
頭の中でアドレナリンが沸騰している、戦闘モードの彼は最高に美しい。それはショーでは難しい。
間違いなく、彼は素晴らしいショースケーターになる。それでも・・・と思うのは、ファンの我儘なのでしょうか。
2014年4月5日の中日新聞のインタビュー記事で、結弦くんはこんなことを言っていました。
簡単に言えば、理想との距離は縮まらない。到達することはないけれど、試合に勝つと通過点として小さな達成感がある。大きな達成感を味わいたくはないかなと思う。目標を決めると、行き着いたら燃え尽きてしまう。
私などが考える”到達点”よりも、彼の目指すところは、もっと果てしなく遠いものなのでしょう。
きっと、永遠に理想に到達することはない。それでも、どこかで区切りをつけなくてはならない。
だからこそ、「大きな達成感」を味わう舞台として、彼は平昌を選んだということなのでしょうか。
そこで燃え尽きるために・・・?
長ったらしい一人語りを、最後までお読みくださった皆様、ありがとうございました。
あの当時の、結弦くんの「平昌引退」ショックの理由。
自分の場合は・・・ということで振り返ってみました。
突出した技術力、年々進化する表現力、リンクという戦場で戦っているときの崇高なまでの美しさ。
振り返って、あらためて、彼がどれほど類まれなスケーターであるか、実感したのでした。
もちろん、彼が幸せであることが一番大事。彼が選んだ道は、何であれ、応援していくつもりです。
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2015/05/26 12:30 | 2014-2015 season | COMMENT(6) | TRACKBACK(0) TOP
コメント
みずほさま
こんばんは
まだ、続く、ということですので、途中でコメントを書くのは控えようかと思いつつ……。
みずほさんの書かれていることにとても共感します、と伝えたくなりました。
丁度平昌オリンピックで23歳、フィギュアスケートは選手寿命が短いとはいえ、
やはり、まだ23歳。
いつもギリギリの、常人には想像もつかない場所で闘い続けている
とはいえ、やはり「まだ23歳」と思ってしまいます。
彼の肉体の消耗はおそらく彼自身が一番よくわかっていて、23歳を限界と見定めているのだろう、終点を定めているからこその毎日なのだろう、とは思います。
いや、ぶっちゃけ、そうでもしなければ、あんな過酷なシーズン送れないでしょ!
でも、そうなのです。みずほさんの書かれているように、技術と表現が最高の融合を見せるのは23歳じゃない、のではないか、それが見たい! と強烈に思います。
>突出した技術力、年々進化する表現力、リンクという戦場で戦っているときの崇高なまでの美しさ。
よくぞ言ってくださいました。もうもうそれに尽きます。
恐らく、いや間違いなく、彼はプロになったら、プロスケーターの概念を変えてしまうと思います。すでにEXの概念変えていますよね。この間の国別のEX、無良選手もハビも4回転を組み込んだプロを滑っていました!(よね? もうすでに記憶があいまいに……)(たしかショウマくんも、挑戦していませんでしたっけ?)。国別自体、ガンガンの競技大会になったし。 とんでもない影響力です。
でも、それでも、競技の時の羽生くんは格別、あのヒリヒリした緊迫感の中に出ていく羽生くんが見られなくなるのはとてつもなく寂しいです。
もちろん、あの聡明な、自分を誰より冷静に客観視できる彼が出す結論はそれがどうであれ、最高なのです。
ただ、ちょっとファンの我儘を言ってみたーい!。
No:4225 2015/05/27 00:01 | レモンパイ #- URL [ 編集 ]
今日はじっくり反芻しながら読ませていただきました。
私の「結弦くん感」は表層的なのかもしれません。
皆さんほど深くないことは確か。
ただ「23才では勿体ない」はどうなのかな、と思うのです。
あの美しいジャンプは今までの体型だから生まれたものではないか。もう体型変化が現れていますし、成人男子体型になってくるとジャンプは無論、スケート自体が変わってくるのではないでしょうか?
粘っこい滑りが苦手な私は、結弦くんの浮いたような滑りが好きです。プルさんも4回転は跳びますが、スピードはあるが重量感もある。男子は年齢を重ねるとそうなるのでしょう。
何故かそんな結弦くんは観たくない。
それは「羽生結弦」とは別物。円熟した「阿修羅」など存在しません。リンクに立てば、貪欲でナルシストで俺様で…勝利を獲ろうとリンクを疾走するには23才ぐらいが限界ではないでしょうか。
もっとも予想など覆す方ですからどう変わっていくのか、簡単には未来図は見えませんけれど。
No:4226 2015/05/27 14:59 | yokko #- URL [ 編集 ]
レモンパイ 様
レモンパイさん、こんにちは。
>やはり「まだ23歳」と思ってしまいます。
男子シングルに関しては、選手寿命が何気に延びてませんか?
スポーツ医学が発達して、昔より選手を身体的にケアできるようになってるからでしょうか。
高橋さん&織田さんは引退年齢が二十代後半。
小塚選手も二十代後半だけど現役続行を決め、無良選手も平昌までやると言ってる(平昌年齢27歳)。
ハビくんも平昌まで。テン選手は、カザフに冬季五輪誘致できたら、平昌の次も絶対でますよね。
チャンもプル(←ひえ~っ)も現役続行。アボットもソチでやめると言ってたのに、なんでかまだやってる(笑)
「早い」と思っちゃうのは、男子では二十代後半までやる選手が増えてるからかもしれません。
女子シングルは反対に若年化してますね。ロシアが若いのガンガン投入してくるし。
16歳のラジオノワの「私はもう若くない」の言葉に、ワグナーが「じゃあ、私はお婆さんね」と返したくらいですものね(笑)
>彼はプロになったら、プロスケーターの概念を変えてしまうと思います。
ショープロに四回転を入れる選手がでてきたのは、四回転を入れたSPを、シーズン前にショーで披露するようになったこと、結弦くんの影響力・・・この二つかな・・・と思ってます。
ただ、ハビくんも無良選手も、プロになったら、四回転は入れてこないんじゃないかなあ。同じアイスショーにでていても、現役が四回転にチャレンジして転倒してもご愛嬌だけど、プロスケーターが転倒するのは・・・てのがあるから(笑)
結弦くんは規格外なのでわからないけど、今でもショープロでは「アーチスト」の部分を前面に押し出してる感じなので、無理に四回転を組み入れてくるかなあ・・・と。3Aはガンガン飛ぶでしょうけどね(笑)
コメント、どうもありがとう♪
No:4227 2015/05/27 16:51 | みずほ #o/PXu/q6 URL [ 編集 ]
yokko 様
yokkoさん、こんにちは。
>ただ「23才では勿体ない」はどうなのかな、と思うのです。
>あの美しいジャンプは今までの体型だから生まれたものではないか。もう体型変化が現れています
チャンが、まだ結弦くんが十代のとき「結弦がジャンプを跳べるのは、あの体型だからだ。体型が変わったら、跳べなくなるさ。」と言ってたらしい。yokkoさんと同じことを言ってたのですよ。
結弦くんの体型は、海外の解説者からも、「ジャンパーとして理想的」だと言われていますよね。
高橋さんは「羽生選手のジャンプは芸術品」と讃え、カート・ブラウニングは「結弦のジャンプは神からの贈り物」と絶賛していました。カートですら、結弦くんがなぜあんなジャンプを跳べるのかわからないんだそうですよ。異次元のジャンプらしい。
体型変化に関しては、16、17歳のときより筋肉はついてきましたが、昨年のNHK杯のSPとEXを現地で見る限り、軸が太くなってる感じはしませんでしたが・・・。相変わらず、すごい細さでしたよ。(テレビでみると実物より太く見えますが)
>粘っこい滑りが苦手な私は、結弦くんの浮いたような滑りが好きです。
>それは「羽生結弦」とは別物。円熟した「阿修羅」など存在しません。
妖精さんは妖精のまま、表舞台を去ってほしいということですよね。
「羽生結弦」に何を求めるかは、同じファンであっても人それぞれ。そういう考えもあって当然です。
私は、円熟した滑りを見せる「大人」の羽生結弦も見たいと思う。それがショーでもかまわないけど、「できれば現役で」という、ただのファンの我儘です(笑)
>何故かそんな結弦くんは観たくない。
yokkoさん、心配しなくても、おそらく23歳で結弦くんは引退しますよ(笑) ただ、私やレモンパイさんのように、早い引退を惜しむファンも中にはいる・・・というだけのことです。
結弦くんがどれほどスーパースターでも、引退したら人気も落ち着くでしょう。アスリートは、やはり現役のときが華ですから。
彼が年齢を重ねて「妖精」ではなくなったとき、「妖精の羽生結弦」をのみ愛したファンが「そんな羽生結弦は見たくない」と思えば去っていくでしょう。それはそれでいいと思うのです。
17歳の彼のファンになったとき、「なんて可愛い妖精さんだろう。この子は永遠に17歳でいてほしい。もう、吸血鬼になってもいいから、年をとらないで!」と思ったものでした(笑) 今はかなり少年ぽさはなくなってきたけれど、17歳のときに勝るとも劣らぬほど、彼は美しく成長してくれた。だから、もっと大人になった「羽生結弦」がどんな魅力的な男(スケーター)になるか、私は大いに楽しみにしてるんですよ(笑)
コメント、ありがとうございました♪
No:4228 2015/05/27 17:54 | みずほ #o/PXu/q6 URL [ 編集 ]
みずほさんの語りを聞くだけで、じゅうぶん過ぎるほど気持ちが満たされました。
<17歳の彼のファンになったとき、「なんて可愛い妖精さんだろう。この子は永遠に17歳でいてほしい。もう、吸血鬼になってもいいから、年をとらないで!」と思ったものでした(笑)
本当に!「悲愴」や「ロミオ」の激情的な少年美。時分の花という言葉がぴったりでしたね。
美少年が平凡な青年になるのはよくあること。でも、羽生結弦はそうはならなかった。なるはずがない、中身が桁外れなのだもの・・
彼の平昌引退を聞いた時は、引退そのものより、生まれながらのスケーターであると同時にファイターである彼が、自らにそんな宣告を下している冷徹さにショックを受けました。
普通は「やれるところまで」とか「跳べる間は」とかもっと曖昧だし、もっと自分に希望を与えると思うんです。だって選手として試合することをなによりも愛してるんだから。はあ〜・・とことんSですよね・・
みずほさんのおっしゃる通り、羽生さんに対する意見は多岐に渡っており、ひとそれぞれだと思います。
わたしも、言わないワガママがたくさんあります。
でも、結局はこれだけの覚悟を持って日々を送っている彼の選択を応援するだけです。なにものにもとらわれず、いっさいの妥協無く、自分の決めた道を進んで行けるようにと願っています。彼の身体がそれを叶えてくれますように。みずほさんのいつもの〆の言葉、ステイヘルシーですね(笑
No:4246 2015/06/04 13:57 | ひろ #- URL [ 編集 ]
ひろ 様
ひろさん、こんにちは。
>美少年が平凡な青年になるのはよくあること。でも、羽生結弦はそうはならなかった。なるはずがない、中身が桁外れなのだもの・・
「ベニスの死す」のビョルン・アンドレセンも14歳のときは彫刻のような美少年だったのに、2~3年たったら平凡な男の子になってたし、「太陽と月に背いて」の16歳のデカプリオは極上品だったのに、今はただの中年豚になってしまった。デカプリオは16歳のランボー役が美のピークだったと言われてますよね。
彼らのように「若さ」だけに頼る美しさは、若さがなくなれば劣化していきますが、結弦くんは年齢を重ねても、そのときそのときの「時分の美」を体現していくタイプだと思います。「男の顏は履歴書」といいます。内面の豊かさは姿形ににじみでてくるもの。今は17歳のときにはなかった妖艶さと王者としてのオーラも加わりました。
>自らにそんな宣告を下している冷徹さにショックを受けました。
「命を削って」という覚悟をもって挑むのは、「あと4年」と考えないと、精神的にもたないのかもしれません。「あと4年」と考えるのと「あと8年」と考えるのでは、自分への追い込み方も違ってくるでしょう。
>とことんSですよね・・
皆さん、彼のことをSだというんだけど、彼って、他人には優しいですよね。自分に対して「S」なのは、要は「M」じゃないのかな?って思うんだけど。違うのかな?(笑)
この記事は、まだあと2回くらいは続きます(汗) 今、タイムリーな記事を優先してるので、続きはまだ少しあとになりますが、よければ続きも読んでください(^^)
コメント、ありがとうございました♪
No:4247 2015/06/05 13:06 | みずほ #o/PXu/q6 URL [ 編集 ]
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