クリケットクラブの強さの秘密 その1 ~読売新聞記事より
2回に分けて、クリケットクラブをとりあげます。
ます、読売新聞の記事から。これはとても良記事だと思います。
王者・羽生結弦を作るカナダの名門クラブの秘密とは(2017年08月18日読売オンライン)
来年2月に開かれる平昌五輪のフィギュアスケート男子で、羽生結弦が五輪連覇の偉業に挑む。彼が練習拠点にしているのが、カナダ・トロントにある「トロント・クリケット・スケーティング&カーリングクラブ」で、8月上旬にはここで、フリーの新プログラムを公開した。このクラブには、羽生のライバルであるハビエル・フェルナンデス(スペイン)も所属している。名選手を次々と輩出する名門クラブの強さの秘密はどこにあり、羽生の強さはどう作られているのだろうか。(読売新聞運動部 永井順子)
◆ 複数のコーチから羽生は指導を受けている
8月8日、リンクサイドに姿を現した羽生は、他の選手やコーチと談笑し、スケート靴をはき始めた。トロントに練習拠点を移して今季で6シーズン目になる。周囲と英語で会話する姿も、すっかりさまになっている。
羽生が練習するのは、トップ選手を対象としたクラスだ。最もレベルの高い技術を持った選手ら約10人が一緒にレッスンをスタートし、順番にそれぞれの曲をかけてプログラムを滑っていく。
リンクの上や周りでは、羽生を指導するブライアン・オーサーコーチや、カルガリー五輪アイスダンス銅メダリストのトレーシー・ウィルソン氏ら、数人のコーチが見守る。このクラブの最大の特長が、複数のコーチによるチーム指導だ。
リーダーであるオーサー氏の下で、スケーティングはウィルソン氏、スピンはペイジ・アイストロップ氏といった専門コーチが、それぞれの担当分野を教える。羽生は「コーチたちが、いろいろな視点で自分のジャンプを見てくれるのは素晴らしい。音楽もみんなで共有できる」と、このクラブのメリットを強調する。
高い技術を持つ名選手を多く輩出するため、ジャンプ練習に力を入れていると思いがちだが、そんなことはない。1日の練習の終わりは、全員による15分間のスケーティング練習で締めくくられる。
◆ 名門クラブは200年近い歴史を誇る
「トロント・クリケット・スケーティング&カーリングクラブ」は、トロント市の中心部から北へ約10キロの高級住宅街の一角にある。創立は1827年。200年近い歴史を誇る会員制の名門クラブで、来場者は入り口でチェックを受ける。建物内に足を踏み入れると、そこには厳かで格調高い雰囲気が漂っている。
1階にあるスケートリンクは、縦約57メートル、横約27メートルで、国際規格より一回り小さいが、練習するには問題ないサイズだ。壁には一面に、クラブが輩出した五輪や世界選手権のメダリストたちの名前を刻んだプレートが飾られている。ソチ五輪を制した羽生の名前はもちろん、元世界王者のフェルナンデス、1984年サラエボと88年カルガリーの両五輪で銀メダルに輝いたオーサー氏の名前もある。
2階建ての建物は通年リンク、ジム、スタジオ、カーリング用リンクなどを完備している。ジムやスタジオでは、専門のトレーナーからピラティスやダンスのレッスンを受けることができる。ピラティスに継続して取り組んできた成果もあり、かつてはきゃしゃでフリーを滑り切るのが課題だった羽生の体も、今ではすっかりたくましくなった。
建物を出ると、プールやテニスコートなどがあり、天然芝の庭が一面に広がる。庭を望むレストランで食事を取ることもできる。羽生が「これでうまくならなかったらどうするの、というぐらい恵まれている」と言う通り、必要な設備がすべてそろっている印象だ。
◆ 15年の「SEIMEI」はイメージを共有してから作った
コーチだけでなく、振付師も一流の人材が集まっている。
羽生は今季のショートプログラム(SP)で、2季ぶり(3度目)にショパン作曲の「バラード第1番」を演じる。フリーには、映画「陰陽師」のサウンドトラックをアレンジした「SEIMEI」を2シーズンぶりに選んだ。
SPを振り付けたのはジェフリー・バトル氏、フリーを担当したのはシェイリーン・ボーン氏で、2人とも元トップスケーターだ。現在は世界中のスケーターから、「プログラムを作ってほしい」と依頼が殺到している。オーサー氏はそんな人気振付師をチームの一員として迎えているため、選手たちはプログラムを優先して作ってもらうことができる。
羽生にとって、ボーン氏とコンビを組むのは4シーズン目になる。
過去には、「オペラ座の怪人」(14~15年シーズン)、「SEIMEI」(15~16年シーズン)、「ホープ&レガシー」(16~17年シーズン)でともに作品を作り上げてきた。
15年に「SEIMEI」を作り上げた時は、羽生とボーン氏が一緒に映画のDVDを見て、物語のイメージを共有してから振り付けに臨んだ。今回、新たに演技構成を組み替えた新「SEIMEI」についても、ボーン氏は「お互いのことを理解できているから、様々な動きにトライできた」と手応えを口にしている。
ソチ五輪でフリーの「ロミオとジュリエット」を振り付け、好評だった昨季のエキシビション用プログラム「ノッテ・ステラータ(星降る夜)」を担当したデイビッド・ウィルソン氏も、コーチングスタッフとしてリンクに常駐している。振付師たちはシーズン中にも演技を手直しすることがあり、よりよいプログラムへ進化させることを怠らない。
◆ フェルナンデスが身近にいることのメリット
身近にライバルがいることも、大きな利点になる。
羽生は「トップスケーターがたくさんいるから、多くの刺激を受けつつ練習できる。これがクリケットクラブの一番のメリットであり、強みだと思う」と強調する。
特に大きいのは、15、16年と世界選手権を連覇したフェルナンデスの存在だろう。羽生より1年早くこのクラブの門をたたいた26歳のスペイン人は、羽生にとって「お兄ちゃんのような存在」であり、「絶対に負けたくない存在」でもある。練習から高いレベルで競い合うことが、羽生の成長を促したのは想像に難くない。フェルナンデスも、「結弦と一緒に練習するようになって、彼のストイックさに刺激を受けた」と世界レベルのライバルが身近にいることの効果を認めている。
この2人、オフシーズンの過ごし方は対照的だった。
羽生は5、6月の日本のアイスショーに出演した後、トロントで約7週間、「とても真剣な練習」(オーサー氏)を積んできた。一方、フェルナンデスは母国のスペインで休暇を過ごし、8月上旬に練習を始めたばかり。やり方は違っても、オーサー氏は「選手によってアプローチの方法は違う。一人ひとりと話し合い、個々のやり方を決める」と個性を尊重している。
4年前のソチ五輪シーズンを、羽生は「ソチの頃は、ブライアン(オーサー氏)がああやれ、こうやれと言うことに、自分の考えをプラスするだけだった」と振り返る。今では「自分はこう思う、ブライアンはこう思う、シェイリーンはこう思う、そういう考えをまとめて議論して、いい方向に持っていける。1+1=2じゃなくて、3にも4にもなっている」と思うようになった。このクラブの恩恵をより実感しているようだ。
オーサー氏が「世界で最高のクラブ」と自負するトロントの地から、フィギュアスケート男子で66年ぶりとなる五輪連覇の王者は誕生するか。種はもうまかれている。
羽生が練習するのは、トップ選手を対象としたクラス ・・・当たり前のことですが、やはり選手のレベルクラス分けされてるわけね。日本人スケーターが、夏季にクリケットに短期留学することがありますが、結弦くんと顔を合わすことはあまりないらしい。クラスが違うとそうなりますよね。
このクラブの最大の特長が、複数のコーチによるチーム指導 ・・・これもよく知られていることですね。チーム指導してるので、オーサーが遠征で留守のときでも安心なのです。
1日の練習の終わりは、全員による15分間のスケーティング練習で締めくくられる ・・・スケーティング重視のクリケット。「ジャンプを教えてほしくてクリケットにきたのに、スケーティングの練習ばかりさせられた」と、オーサーの生徒になったばかりの頃、結弦くんは言ってましたね(笑) オーサーは「もし、他のコーチの指導を受けるとしたら。佐藤コーチの指導を受けたい」と言っていたことがありました。佐藤コーチといえば、スケーティング指導に定評がありますが、オーサーはそれくらいスケーティングを重視しています。そして、今や、結弦くんは、パトリックと並んで、スケーティング巧者として名前があがるほどになりました。
200年近い歴史を誇る会員制の名門クラブで、来場者は入り口でチェックを受ける ・・・結弦くんに関しては、これすごく大事なことだと思います。練習拠点が国内でなくて本当によかった。なにせ、オーサーの著書によれば、カナダにいてさえ、毎日のように結弦くんのファンが、結弦くんに会いにやってくるらしい。でも、完全会員制なので、部外者は入れない。クリケットクラブは、そういった非常識なファンからも守ってくれています。だから、結弦くんは雑音に煩わされることなく、練習に集中できるのです。日本だと、こういう厳しい来場者チェックしてくれるリンクないものね。
振付師たちはシーズン中にも演技を手直しすることがあり ・・・これも大きい。ジェフ、シェイリーン、ウィルソン、世界中から依頼がくる超一流の振付師がハウスコレオグラファーなんて、なんて贅沢な環境なんでしょう。
考えをまとめて議論して、いい方向に持っていける ・・・これは、結弦くんの精神的成長ゆえでしょうが、想像ですが、結弦くんの語学力の向上も大きいと思います。議論するには、ある程度の英語力が必要。以前は、心に思っていることも、なかなかオーサーに伝えられず、それが地味にストレスになったこともあったのではないでしょうか。コーチや振付師とのコミュニケーションがスムーズに行えるようになったことは大きいですね。
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2017/08/20 09:50 | クリケット・プログラム・CS(2017-2018) | COMMENT(2) | TRACKBACK(0) TOP
コメント
みずほさん、こんにちは
あらためて、クリケットクラブって防御と攻撃の両面兼ね備えた最強の戦闘力持ってる「砦」ですね(^^;
軍師と設備が揃ったクラブは他にもあるでしょうが、現役のワールドチャンピオン競いあう二人のスケーターが揃った「トップクラス」が居るクラブって空前絶後ですよね…
「これでうまくならなかったらどうするの?」って、さらっと言ってますが、移籍して2年でオリンピック金メダルとったヒトの口からそれを聞くと…並のスケーターでは足を踏み入れることすらビビるでしょうね~正に「虎の穴」ですね。
続きも楽しみにしてます♪
No:7221 2017/08/20 21:24 | なすか #- URL [ 編集 ]
なすか 様
なすかさん。こんにちは。
>現役のワールドチャンピオン競いあう二人のスケーターが揃った「トップクラス」が居るクラブ
結弦くんが入門した時点でハビがいましたが、それすら、シングルではあまり前例がないといわれていましたよね。アイスダンスとかではあるけど。シングルのトップ選手が同じリンクで切磋琢磨し合うことのメリットを証明した・・・という意味でも、クリケットは革新的かなと。チャンが今、ネイサンと同じリンクで練習してるけど、全盛期のチャンだったら無理だったでしょうね。全盛期の頃は「結弦と同じリンクで練習したくない」とか言ってたし(笑) それだけ、チャンも大人になったということでしょうか。
>移籍して2年でオリンピック金メダルとったヒトの口からそれを聞くと
オーサーは「もともと才能のある選手」を開花させる手腕はすごいけど、魔法使いじゃないから(笑)、才能のない選手をトップにすることはできません。オーサーと出会えた結弦くんやハビやヨナは幸運だったけど、一番のラッキーな勝ち組はオーサーかも(笑)
コメント、どうもありがとう♪
No:7223 2017/08/21 10:58 | みずほ #o/PXu/q6 URL [ 編集 ]
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