「今の僕は20%」~求道者・羽生結弦の理想との距離

遅ればせながら、Numberの記事について少し。
まず、特に印象に残ったところだけ、抜粋します。




羽生結弦 「今の僕は20%」(文:松原孝臣)

「今の自分の心境としての思いで言えば、20%くらい」
それは、オリンピックへ向けての完成度を表しての数字ではなかった。

故郷の仙台を離れ、トロントへ向かう直前の’12年4月にインタビューした際、理想のスケーター像についてこう語っていた。
「何でもできるスケーターになりたい。全部がうまいということを特徴にしていきたいですね」
その目標への到達度だった。

「理想からすれば、全然ですね。自分のスケート人生を考えて、ここが限界だとかこれが100%というのが自分でわからない。それは神のみぞ知る、だと思うんです」
「20%」と答えたあと、ほんの少し間を空けて続けた。
「まだ80%以上、伸ばせるぞ、と」

「やっと筋肉やいろいろなものが安定してきたし、それ以外のこと、表現であったり知識というものもだいぶついてきた。技術もです。だからこそ、これからいろんなものが円熟していくんだと思います」

「以前よりフィギュアスケートが、より心の支えになったなと思います」

オリンピックの連覇を見据えて、羽生は進んできた。
同時に、理想のスケーターになりたいという目標を追い求めてきた。それはまだ遠くにあると思う。だからどこまでも伸びていきたい。伸びていけると信じる。
「1年後の自分に会えるとしたら、『まだまだだろう、お前』と言われると思います。1年後になったら、たぶんもっと成長している。でも、1年後の自分がそのとき聞かれたら、やっぱり『20%』と答える思う。僕だったら、そう言う。そのときには限界がもっと遠くに見えていると思います」



求道者・羽生結弦 の姿をダイレクトに引き出した良記事だと思います。

2012年4月、仙台を離れるとき、結弦くんは「何でもできるスケーターになりたい。全部がうまいということを特徴にしていきたい」といっていた。そして、今年のトロントの公開練習で、自分の強みを聞かれ、「全部です」と言い切るほどのスケーターに成長した。それでも、彼にとっては「理想からすれば、全然」なのです。宇宙人といわれる結弦くんですが、彼の”理想のスケーター像”が、もはや銀河系をも突き抜けてしまっているから。

1年後の自分がそのとき聞かれたら、やっぱり『20%』と答える思う・・・この言葉は、ソチで金メダルととった後、2014年4月5日の中日新聞のインタビュー記事の、この言葉と被ります。

簡単に言えば、理想との距離は縮まらない。到達することはないけれど、試合に勝つと通過点として小さな達成感がある。大きな達成感を味わいたくはないかなと思う。目標を決めると、行き着いたら燃え尽きてしまう。


彼は、ヘルシンキワールドで、これまでで一番難しい構成でありながら、SEIMEI以上の完成度で世界最高得点を更新したことに「達成感があった」と答えていました。でも、おそらく、彼にとっては「小さな達成感」。彼の理想への旅路の中で、それも「小さな通過点」なのでしょう。

理想との距離は縮まらない・・・これは、このNumberの彼の言葉「1年後の自分がそのとき聞かれたら、やっぱり『20%』と答える思う」と同じ。久々に、2014年当時の彼の言葉を見返して、「やだ、同じこと言ってるよ!」と、その相変わらずの「ブレ」の無さに感心しました。でも、あえてそうしているのかもしれない。「目標を決めると、行き着いたら燃え尽きてしまう」から。ましてや、今や、彼の一番のライバルは自分自身になっている。

私などが考える”到達点”よりも、彼の目指すところは、もっと果てしなく遠い。永遠に理想に到達することはないかもしれない。五輪連覇も、今の彼にとっては、「目標」ではなく「大きな通過点」に過ぎないのだろうなと思います。目標、いや理想は、もっともっとはるか先にある。

以前、伊調馨さんが結弦くんに似ているという記事を書きました(記事はこちら)。伊調さんも典型的な「求道者」型のアスリートです。プロ野球のイチローもそうでしょう。でも、だからこそ、世界で「レジェンド」と尊敬されているのだと思います。

でも、今回のNumberの記事の中で、一番うれしかったのは、結弦くんのこの言葉でした。

以前よりフィギュアスケートが、より心の支えになったなと思います


number201708
骨の髄まで求道者なのに、この無邪気な笑顔である


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テーマ : フィギュアスケート - ジャンル : スポーツ

2017/08/29 10:50 | テレビ番組・コラム(2017-2018)COMMENT(0)TRACKBACK(0)  TOP

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