羽生結弦を撮るフォトグラファーたち<高須力> Part.2

「羽生結弦を撮るフォトグラファーたち」の高須力編のパート2です。

パート1はこちら。
羽生結弦を撮るフォトグラファーたち <高須力>



羽生結弦は、自ら創った過酷な世界で、永遠に挑戦し続ける。カメラマン高須力が見た素顔(20100810 REALSPORTS)

アスリートが輝きを放つ瞬間、私たちは感動と興奮を覚え、時に涙を流す。その姿を永遠に残すため、カメラマンはファインダー越しにその一瞬を待つ。選手と同じフィールドに立ち、その一挙手一投足を見逃さないからこそ、感じることのできる一幕がある。
メディアから“絶対王者”とも称される羽生結弦は、だが昨季、これまでに見たことのないほどの苦しい時期を過ごしていた。フィギュアスケートをはじめ数多くのスポーツシーンを追い続けてきたカメラマン、高須力氏の瞳にどう映っていたのだろうか。その素顔をつづってもらった――。


羽生結弦が創り上げた、過酷な世界。常に高みを目指す、永遠の挑戦者。

スポーツの撮影で僕が最も重視しているのは選手の表情だ。細かいことをいえば、瞳の位置にもこだわっている。そういう意味で、羽生結弦は最高の被写体だといえる。記者会見で一点を凝視しながらライバルの話を聞いていたかと思えば、満面の笑みでうなずいてみせたり、どんなときでもその表情は豊かだ。僕の一番のお気に入りは殺気立った瞳だ。

そんな彼の一挙手一投足を逃すまいと現場入りからリンクを降りるまで、文字通り張り付いている。こんなアスリートを僕は他に知らない。なぜ追い続けられるのか。もちろん仕事だからニーズがある以上は応えなければならない。しかし、いくら仕事だからといって、ずーっと追い続けられるほど、僕は仕事熱心な男ではない。他になにか理由があるんじゃないかと考えたことがある。

本稿を書くにあたって、その理由を探していたら少し思い当たる部分が見つかったのでご紹介したいと思う。



高須力1


羽生以前と以後でフィギュアの世界は変わった、と僕は思う。10年くらい前に話題になった「高難度ジャンプvs表現力」という対立構造は成立しなくなった。今やフィギュアスケートはクワッド(4回転)なしでは語れない。高難度のジャンプをより多く跳び、なおかつ美しく滑らねばならなくなったからだ。その世界を創り上げたのは間違いなく羽生結弦だ。

でも彼が望んだ世界は過酷だった。クワッドジャンプは彼の足首を容赦なく痛めつけた。それでも彼は諦めない。挑戦し続ける。煽(あお)りたいマスコミから絶対王者なんて呼ばれることもあるけれど、僕はそうは思っていない。常に高みを目指し、そこに上るためならばリスクを厭(いと)わない男。カッコよくいえば永遠の挑戦者で、平たくいうと究極の負けず嫌いだ。損得勘定はできない。試合で負けるなんてもってのほか。昨日の自分に負けるのすら好きじゃない。

昨シーズン、彼が話した抱負は「けがをせず滑り切ること」だった。ここ何年もけがに苦しめられてきたからこそだと思うが、少し意外だった。大人になったといったら怒られてしまうだろうか。来シーズン、新たな世界へ挑戦するために耐えることを選択したのだ、と僕は思った。しかし、もともと抑えが効く男ではない。けがはしなかったけれど、勝つことができなかった。2月に突然発表されたプログラム変更は我慢の限界だったように思う。僕はそのニュースを聞いたとき「やっぱりね、それでこそ羽生結弦だよ」とうなずいていた。

そんな負けず嫌いな彼だからこそずっと見ていられるのだと思う。 

昨シーズンもう一つ気付いたことがある。それはスケートカナダでのことだ。練習中に彼が手にとったボトルに赤い液体が入っていたのだ。



高須力2


「あれ、去年はあんな色だったかな? どんな味するのかなぁ。スムージー系? いや粘度がないからスポドリかな?」

とか考えながら撮影していることに気が付いて、我ながら驚愕した。

こ、これが沼ってやつですか?

<了>



結弦くんにはこれまで数々の呼び名がありました。
その数の多さからも彼の際立った多面性がうかがえます。

氷上の貴公子、東北が生んだ妖精、神の子、フリルを着た阿修羅、歩く少年ジャンプ、皆殺しロミオ、討ち入りロミオ、パリの放火魔、テクニカルお化け、天使の笑顔をもつ野獣、暴れ馬、惑星ハニューの唯一の住人、東洋の真珠…まだまだあるでしょう。

高須さんのお気に入りの羽生結弦は「殺気立った瞳」なのですね。千の表情をもつ彼の勝負師の顔がお好きなのでしょう。そう、ゾーンに入ったときの狂気を感じさせる瞳が。羽生結弦の魅力の大きな部分がこの「狂気」だと思っています。彼が発する狂気が、見る人をも狂わせるのです。


こ、これが沼ってやつですか?

結弦くんは、ニースロミオの頃にはすでにノンケキラーと呼ばれておりました。
これまでも多くの才能あるオッサンたちを沼に沈めてきた結弦くん。
高須さんもめでたく羽生沼の住人になられたようです(笑)


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タグ : 2020-2021_season

2020/08/11 08:00 | アーチスト・裏方・メディアCOMMENT(0)TRACKBACK(0)  TOP

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