羽生結弦を撮るフォトグラファーたち <矢口亨>
羽生ファンの天敵(笑)小学館が、厚かましくも結弦くんの特集を組みました。
傘下の女性誌に、矢口さんのインタビューを掲載。とりあえず中身を点検…ということで、図書館でチェック。カラーで6ページ。矢口さんのインタビューはよかったです。写真は…良いものもありましたけど、小さい写真が多かったのが残念でした。 ← アマゾンサイトへ
矢口さんのインタは気になるけど、小学館ということで買い控えた人も多いと思います。
また、羽生特集は紙媒体のOggiにしか掲載されていないようです(WEB版にはありません)。
矢口さんのインタ部分のみ書き起こしておきます。
カメラマン、矢口亨氏が見た羽生結弦
競技者×表現者という二面性
「羽生結弦2019-2020」のバックヤード
―被写体としての羽生選手にひきつけられる点は?
「特にひきつけられるのは、自分の理想に誠実なところです。羽生選手は高難度のジャンプでさえも表現の一部として音楽と調和させて美しく跳ぶことにこだわっていて、それは本当に困難な道だと思います。でも、理想にまっすぐ向き合っているからこそ、彼の氷上のひとつひとつの所作は透き通っているのだと思います。
演技中はもちろん、練習場に向かうとき、集中する時間、リンクインの瞬間とか、張り詰めた美しさがあってすべてが絵になるのですが、会場入りのときや、ふとした表情にはお茶目で負けん気が強い20代半ばの青年らしい等身大の魅力があって、そのギャップも好きです。緊張から解放されて安堵の表情を見せてくれるときは、こちらもほっとして思わずシャッターを切ってしまいます」
―このシーズンで特に記憶に残っているシーンは?
「昨年12月にイタリアのトリノで行われたグランプリファイナルのフリーが印象に残っています。4回転ジャンプ4種類5本の超高難度の構成でショートプログラム2位からの巻き返しを狙った、そのときの渾身の演技が好きです。フィニッシュポーズで体を支えきれないくらい全力を出し切った彼を見て、心が熱くなりました。厳しい状況でも、勇気をもって自分にできることを限界を超えてやり切ろうとしてきたからこそ、強くなれたのだと思うし、見ている人の記憶に刻まれる。
結果はネイサン・チェン選手には及ばなかったけれど、羽生選手のように勝てなかった試合でも何かを残せる選手はいません。フィギュアスケートに向き合う姿勢自体が、見ている人の心を動かすストーリーになっていると感じました」
―スポーツ写真なのに「静けさ」が印象的です。
「スポーツ報道の現場では、サッカーだったらゴールの瞬間、野球だったらホームランの瞬間など『場面』を求められがちなのですが、僕自身はその前後の集中している様子や迷いや悔しさや喜びといった内面の感情の動きに合わせてシャッターを切りたいという思いがあります。そうすると写真から伝わる躍動感という意味では『静か』になってしまうのですが、被写体の内面をしっかり表現できていればたくさんの人の心に届くと思うので、これからもそこを大事にしていきたいです。
羽生選手は唯一無二の存在だからこそ、心に孤独を抱えて闘うことも多いと思います。だから、今回は背景や空気感をより静謐にして、彼のまとっている静寂を表現することを意識しました」
―これは「ひとりの青年」のストーリー
その実力とスター性から、国内外の人気を誇る羽生選手。彼を特集したスポーツ雑誌や写真集も数多く発表されています。しかしそんな中でも、この写真集は異色。順位やスコアなどにあまり言及せず、まるでひとつの映画のように、ストーリーが静かに紡がれています。
「24歳から25歳になる羽生結弦というひとりの青年が、フィギュアスケートを通して自らの理想と向き合い、挑戦しながら前に進んできた1シーズンを一連の写真を通して伝えたいと思いました。だから、リング外の自然な表情の写真や感情の揺れがわかるような写真も多めに入れました。記録ではなく記憶に訴えたかったので、大会表記や成績、テキストなどは極力控えめにして全体がシームレスな物語としてつながるように意識しました」とカメラマンの矢口さんは語ります。
―美術書のような写真集にしたかった
そして「羽生選手は競技者であると同時に表現者でもあります。その二面性を写真集という形で表現するために、中身はしっかりしたアスリートのドキュメント、装丁は美術書のような感じにしてもらいました」と矢口さん。正方形のフォーマットに、余白が多いシンプルなレイアウトが印象的な一冊になっています。
「ページに余白をつくったのは、スケートリンクの白やエキシビションの暗闇だったり、そのときの羽生選手の状況や周りを包む空気感を感じて欲しかったから。選んだ一連の写真は、僕が見て感じた羽生選手の物語です」
―「真珠の耳飾りの少女」のような表情
表紙になっているのは、会場入りした羽生選手の表情をとらえた1枚。演技中の写真ではなく、あえてバックヤードのショットを選んだ理由は「今シーズンからフィギュアスケートを撮影し始めた僕にとって、初めて羽生選手から自然に目線がもらえた宝物だったからです。撮影したのは昨年12月の全日本選手権の公式練習の会場入りのときで、とてもうれしかったのを覚えています。個人的にはフェルメールの絵画『真珠の首飾りの少女』みたいだと思っていて、美術書みたいな装丁にしたいというコンセプトにも合っているなと」
確かに、口元にかすかな笑みをたたえた表情は、”オランダのモナ・リザ”とも呼ばれる名画の雰囲気を彷彿させます。
「振り返りながら歩いていく先には通路が続いていて、物語の始まりを暗示させる写真でもあると思います」
―当時を懐かしんでくれるような写真を
矢口さんが尊敬するのは、現代を代表する写真家、ロバート・フランクだそう。
「個人的な視点が芸術性を備えた上質なドキュメントになっているところがすごい。写真自体がかっこいいうえに時代や空気感までが写っているからこそ、多くの人が何度も見返したくなる作品になっているかなと思います」
自身も人物を撮る上で「空気感」を大事にしていると語ります。
「僕はアスリートを撮影することが多いのですが、撮られた人がずっと後に写真を見たときに、当時を懐かしんでくれるような写真が撮りたいです。そのために被写体となる人物だけでなく、周りの景色や空気感まで含めて切り取れるようにしたいと思っています」
次々と自身の記録を塗り替える羽生選手が、いつかこのシーズンを振り返るとき、いったいどのような思いを抱くのでしょうか?
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2020/08/03 10:10 | アーチスト・裏方・メディア | COMMENT(0) | TRACKBACK(0) TOP
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